賢い生徒たち
バタンッと鉄のドアが無機質な音を発して閉まると私はその場に座り込んだ。
『私が……跡部くんを好きだって言いたいの?』
「え〜?違うの?」
そう聞こえすぐに顔をあげた。
『芥川くん……いつから!?』
「さっき起きた☆あのタンクの上で寝てた!」
急に現れた芥川くんが指を指したのは貯水タンク。
迂闊だった。
「で?跡部好きなんでしょ明良先生?」
『違うよ、』
「ふ〜ん?でもそう自分で言う度に寂しそうだCー」
芥川くんは私の頭を撫でて太陽みたいな暖かい笑顔を私に向けた。
「それに最近、今の明良先生みたいに跡部が寂しそうな顔する、」
『それ……亮くんにも言われた。でも、残念。』
「なにが?」
『私はなにもしてあげられない、』
そう言って立ち去ろうとしたとき、芥川くんは言った。
「さっきも宍戸の兄ちゃんが言ってたけど……俺も自分に言い聞かせてるようにしか聞こえなよ!」
あぁ、参ったな。
自分より周りの方が自分を理解してるなんて。
だけど認めるわけにはいかなかった。
『……そうかもね、』
静かにそれだけ呟いてその場を去った。
なにがしたいのか、自分を理解できなくて泣きたくなった。
『なんで?』
「明良センセ、どないしたん?」
『忍足くん……』
目の前にはメガネをかけた綺麗な顔立ちをした生徒、忍足くんがいた。
「なんや?もう早、教師の高い壁にぶつかったんですか?まだ1年経ってへんですよ?」
『はぁ……だよね。』
「……俺はなんも言いませんけど、無理せんといてくださいよ?」
『え?』
「なんか最近明良センセを見てて思ったんです。顔色悪いなぁって。」
『心配してくれてありがと、』
力なく笑った私の頭を優しく撫でる忍足くん。
『なんでみんな頭撫でるの?』
「誰かに撫でられたんですか?」
『さっきは芥川くんにね、』
「さいですか。」
『なんで……ッ、なん…で?』
気がついたら忍足くんの前で泣いていた。
忍足くんは何も言わずに泣き止むのをひたすら待っててくれた。
良い年した大人が情けない、って思ってるかな?
「泣きたいときは思いっきり泣かんとな明良センセ?」
『……ッ、』
「女がどれだけ綺麗になるかは……どれだけ泣いたかによるんですよ?知ってはりました?」
『……あはは、それクサイよ〜!忍足くん。』
顔をあげて笑えば、涙を指で拭ってくれる。
「うん、明良センセは笑ってる方が絶対良えわ。」
『…おバカさん、』
この日、私は生徒に慰められて気づいたことがあった。
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