胸打たれる
浩太郎のことは景吾がデタラメを言ったんだと思うようにしていた。
だって今までが私のことをどう思ってるとか聞いたことがない。
でも、その日にわかってしまった。
「なんでガキになんだよ?ふつう目の前にいる男だろ。」
体が動かなかったけど浩太郎の声だけは聞こえていた。
「……俺、大学で会ったときから明良が好きなのに。なんて、寝てるときに言うなんて――」
「激ダサだな、」
ドアが開いた音がした。
なんで彼が来たのかわからなかった。
「……なんだ、跡部か。」
「明良に触んな、」
そうこのとき、景吾と浩太郎が睨み合っていたのを私が知ったのは後のことだった。
「あのな?なにも出来ないガキに言われたくねぇよ。少なからず俺は明良と同じ立場にいるから同等だけどな?」
「ッ、」
「なんでここに来た?邪魔すんな。」
「宍戸から聞いてきた。」
「亮?…へー?」
起きないと大変なことになるとわかっていた。
自分の身に鞭打ち、体を動かした。
『ッ、頭……痛い、』
「明良。平気か?」
『……うん、』
実際はどう反応すればいいかわからなかっただけなんだけど、本当に残酷なことをしたと思う。
『あれ、跡部くん…どうしたの?』
「……………」
景吾は眉をひそめ、私を見つめて無言で去っていった。
『………なんだったんだ?』
「酷なことするよな、」
『……』
まさか景吾が屋上から姿を消した後も聞き耳を立てているとも知らず、私は酷いことを言う。
『跡部くんがどうしようと私には関係ないじゃない』
「!」
『だって生徒だよ?』
「……………クソッ、」
景吾を傷つけたことで関係を損なった。
「……なら俺は?」
『………え?』
「俺は少なからず生徒じゃねぇよ。」
『確かにね、』
「明良、俺……おまえが好きだ。」
次の瞬間、私は彼の腕の中。
浩太郎の口からそう聞いて初めて景吾の言葉が本当だったと知ったのだ。
どこで情報を入手したのか。
『浩太郎、嬉しいけど浩太郎は友達だよ。』
「…跡部が好きなのか?」
『跡部くんは生徒、』
そう言うと浩太郎は腕の力を緩めて歩きだし、扉を開けて一言放った。
「それ自分に言い聞かせてるようにしか聞こえねぇ、」
痛いところを突かれた。
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