空、二つ、交差
とある、しがないマフィアの話。
よく晴れた日曜日、有り得ない場所に鉢合わせたドン・ボンゴレと暗殺部隊のトップ。
何故有り得ない場所かって?
それはお互いが書類整理に息抜きに使用する、屋敷の隅っこの部屋だからである。
まぁ、ようはサボりなのだ。
「…なんでザンザスが此処に?」
「……テメェこそ」
ああ、でもこの部屋を使うってことは、自分と同じ目的だと判断。
因みにこの部屋と周辺は人が通ることのない。誰かが「潰したファミリーの怨念が、夜な夜な徘徊する」と言う噂が流れた。
それを聞いた嵐の右腕が、自作のお札の付いたロープをぐるぐる巻き付けたという。
そんな所、別の意味で入りたくない。と言う訳で、絶好のサボり場となったのである。
「あー、ヒマ」
「だったら仕事しろ」
「ヤダ。あの量、真面目にやったら徹夜だもん」
「………」
10年前、死闘をくりひろげた相手に何を言う。全力で殴っていいだろうか。
案外、噂を流したのはコイツかもしれないな。
「そもそも日曜というものは、六日間の労働を感謝するための休日じゃないか。何が悲しくて、執務室に缶詰されなきゃならないんだよ?」
「お前はいつからカトリックになったんだ」
「俺は無神論者だよ、ザンザス」
…確かジャポネーゼは、先祖を敬う仏教ではないのか…?
「昔の人を敬っても、望みも願いも叶わないよ」
「…ソレは使うな」
超直感の使い処が間違っている。
人のことは言えないが。
「…神様は何もしてくれないじゃん。自分が動かないと、守りたいモノも守れないしさ」
瞳を閉ざし、アイツは生意気に語る。
掠れた声は静寂に混じり、消えていった。
「…多分これかさ先、俺は守る為に命を投げ出すと思う。それしか手段が、無かったらだけど。でも…そのときが、もし、その時がきたら、」
俺の事、許さないでね
マフィアに不似合いな男は、微かに泣きながら、笑いながら、言った。
「安心しろ、誰が許すか。俺からボンゴレの座を奪っておいて、よくそんな事が言えたものだな」
「……皆を…頼むね…」
「さぁな」
それがアイツと過ごした、最期の記憶だった。
========
二週間後、彼は亡骸で帰ってきた。
*前次#
[戻る]
無料HPエムペ!