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運命とかじゃなくて、ただのイタズラ。

夜遅く、と言うより朝の未明に近い時間帯。
人が寄り付くことのない路地には、珍しく人が一人立っていて、珍しくないことに人が倒れていた。






死んでいた。

赤黒い液体は、今は石畳の溝を血管代わりにゆっくりと流れ、壁に飛び散ったもモノは黒く酸化し、跡を生々しく残す。
傍らに佇む金髪の少年。

「ベル、随分と派手に殺ったね」「ししし、だってコイツ俺の嫌いなタイプなんだもん」

金髪の少年、ベルは言う。
小さな来訪者、マーモンに。

「いつもは切り刻むだけ切り刻んで飽きたら殺るのに、今日は喉を抉るだけとは随分と優しいんだね。どうしたんだい?」

まるで明日の天気を尋ねるように、物騒な単語を小さな口から発する。しかし、命の冒涜かの行為は彼らにとっては日常のこと。それは彼等が狩る側の人間であるが故の発言。
まあ、ベルの気まぐれは今に始まったことではない。全ての事象を、自分の都合の好いようにするし、させる。今回のことだって、本当は特に理由が無いと思った。

「知らねーよ。単にすっげーイライラしただけ。こいつ見てると、虫唾が走る。かと言って、鬼ごっこする気は全然起きないし」
「………」

意外だった。彼をココまで言わせた、相手に。
視線を、元人間・生物だったモノに向ける。年の頃は10歳前後。汚れた肌に、サイズの合わない服、擦り傷だらけの素足に、濁った灰色の瞳。やせ細った折れそうな首にはいくつもの鬱血痕が見え、男娼まがいでその日その日を稼いでいたらしい。
格差が生み出した社会の産物、典型的なストリートチルドレン。
ふと、僕を襲った奇妙な既視感。
似ている? 何に? 誰に?

「…あぁ、なるほど」

生きるのにやっとの子供には、贅沢すぎる見事な金髪。血に濡れてベッタリと張り付いているが、輝きを失わないで鮮やかなコントラストを奏でている。

「似ている、かも」

君の色に。もしくは君の近しい者に。

「……さーね。ところでマーモン、何しに来たワケ? 俺に喧嘩売りに?」
「まさか、そんな1ユーロの得にならないことをしても疲れるだけだよ。僕はボスからの指令を、君に伝えに来たまでさ」
「えー、王子帰って部屋で寝たい」
「ならそうしたら? もれなくボスの炎がついてくるよ」
「いらねーし」

ちぇっ、と文句を言いながら、しかしすばやく姿を消す。どうやら殺る気はあるらしい。それとも、発散し切れなかったストレスを解消しに行ったのか。
もう一度、名も知らない神に召された少年を見る。



「君も不運だったね」





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それとも、綺麗に死ねて幸運だった?

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あきゅろす。
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