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コチコチと時計の針の音がやたらと響く。
「おい、」
やや呆れた顔でテキストとノートを交互に睨んでいる直政に声をかけた。



よりによって宿題の多い数学担当のお怒りを買った直政が、
教材を抱え豊久の家へ駆け込んで、
"わざわざ苦手なところを出すなんて悪だ!"
そんな檄を飛ばしながら次には"手伝ってくれ"と尻尾を振った。

断ったって勝手に上がりこんでくるんだろうし、
特別断る理由も予定もなかったわけだし、
何より、直政の形相を見て大笑いをした伯父が
"まあ入れてやれ"と言うものだから、
豊久にはどうすることもできなかった訳だけれども。



それなのに目の前の幼馴染は同じ問題でうんうんと30分も唸っている。
自室の雰囲気がどうにも息苦しい。



「おい、直政」
いつまで眺めているつもりだ、と眉根を寄せローテーブルに頬肘をついて、
シャーペンを握り締めた手を見ればふとこの間のことを思い出す。



あのまま、最終下校の放送が鳴らなかったら一体どうなっていたのか



あの指は止まらず肌を巡って、
もしかしたらどうにかなっていたのかもしれなくて、
そうしたら自分と直政が、



自分と、直政が、




「豊久?」
下から覗き込む直政にビクリと肩を震わせ、
そのあからさまな反応にキョトンとした直政が一度小首を傾げながらも、
次にはパッと笑って豊久に詰め寄った。



「触…るなっ!」
近づく顔を手の平で押し返す。
「何で?」
こういう事、思ってたんじゃないのか?
言葉に詰まった豊久の頬へ嬉しげに口付けた。







鈴渡セツ/2009.10.16.




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