○3
キラキラと、光る。
ぱしゃん、
飛沫をあげて、光が散った。
「…っ!直政!真面目に洗え!」
「洗うだけじゃつまらない!」
学校から程近い川に、二人は道着を洗いに来ていた。
量が多い剣道部の道着、洗濯機など学校にはないため、近くの川に放り込んで洗っていた。二人が住む半田舎のこの学校の近くには、生活用水として使える川がある。
「…まったく、終わらないぞ」
「うー…だいたい、マネージャーがいないのがおかしい!」
そんな、今更。
だから当番制でやっているのではないか。
豊久は飽きれ顔で黙々と道着を洗った。いちいち相手にしていたら埒が空かない。
ぶうぶうと文句を言っていた直政も、山と積まれた道着に諦めたのか、おとなしく洗濯を始めた。
…沈黙、
―ごめん、
でも俺、後悔してない…
そんな中
思い出されるのは、神社での一件。
あの翌日は流石に気まずかった。
しかし、
学校も一緒、部活も一緒、家も近所、
そして何より、
長い年月を共に過ごしているため、気まずさは直ぐに無くなっていった。
ただ、
(何だろう、これは…)
幼馴染みという、違和感―…
「豊久!」
直政に呼び掛けられ、はっと我に返る。
「洗濯終った!早く帰るぞ!」
「…あ、ああ」
慌てて豊久も洗濯が終った道着を籠に詰めると、直政の後を追った。
「よし、これで最後だな!」
「ああ」
洗った道着を、物干し竿代りに張り巡らせたロープに干し、洗濯当番は無事に終った。後は施錠をして帰るだけだ。
「…しかし、」
派手に濡れたな!
と直政が上着をガバリと脱いで、乾け乾けと振り回す。
「お前の洗い方が下手なんだろう」
水が飛び散るから止めろ、
と眉間に皺を寄せ荷物を手早く纏める。
「あっ!」
今度は何だ、俺は帰ると言わんばかりに迷惑そうな顔をした豊久だったが、鍵を持っているのが直政だという事を思い出した。
「…どうした、」
「俺、勉強したんだ!」
「勉強?」
学生なんだから当たり前だろう、
口にする前に、言葉は消えた。
「…っ!」
唇が、触れ合う…
それは先日の稚拙なものとは違い、
豊久は、戸惑った。
「!」
するり、
直政の手が動き豊久の下肢を掠めたかと思うと、その手は後ろに回った。
そろそろと、服の上から割れ目をなぞられ、奥がキュウと締まった。
「…っ、直政!」
「あっ、巡回の先生!」
「!」
直政の言葉に、きゅっと口を引き結ぶ。
その手は中に忍び込み、汗でしっとりとした肌をたどり、割れ目の、その奥を擦った。
後ろがキュウと締まると、それに反応したように自身がふるり、と震えた。
「…っ!」
何故自分にこんな事をするのか、訳が分からなかった。
直政が、分からない。
自分が、分からない。
「豊久、」
目前の直政の、余裕のない顔。辛そうなのに、目が合うと、大丈夫かと微笑まれフイと目を逸した。
キーンコーンカーンコーン…
『最終下校時刻となりました。校内に残っている生徒は…』
身体も気持ちも中途半端なまま、
二人は帰路に着く…
―その指先が触れ合うまで、あと3センチ。
kanata/2009.08.31.
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!