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            ○2








「直政!」
呼び掛けてくる声が"不可解だ"と叫んでいるような気がした。
息切れながら力を入れて握り返してくる手は止まらない足を引き止めるようで、





だって唇が熱かった
真っ赤な顔をするから、心臓が止まるかと思った





豊久の手を無理矢理引いたまま夢中で歩き進む。
自然と駆ける心に引きずられ早足に。
どこに行くかも決めず足の動くままに任せれば、
昔よく遊んだ神社の裏手へたどり着いて。



高く伸びた木々も茂った草むらも変わらないのに、
自分はどうしてしまったのかとドクドクと踊る胸を押さえた。


「何がしたいんだ、直政」
足を止めて豊久を見れば、眉根を寄せてキッとこちらを睨みつけて、
それでも染まって見える頬に今日ばかりはそれがどうにもたまらなくて、
ひときわ太い幹に豊久の体を押さえつける。
頬に口付けると肩がぴくんと揺れた。




白いシャツから汗をかいた体が透けて、
覗いた鎖骨がやたらと目線を引き付けて、
自分と変わらない体格とか、日焼けをした色黒の肌とか、
「豊久…!」
抱きしめるわけでもなくただ体を押し付け。




「いい加減にしろ!」
"何なんだ"と、直政の体を押しのけようとするものの、
他人の脚が自分の脚の間に入る、その妙な感覚に小さく震えて力が入らない。
太股が、まだ若いそれを擦り上げる。
僅かに声を上げて、しがみ付くように直政のシャツを握り締めた。



「っ…!」
強く持ち上げられたかと思いきや、さするだけのような動きに下肢が疼く。
布越しながらぐいぐい擦られると目がチカチカしそうな程に気持ちが良くて、
どうにかなりそうな意識に頭を振っても追いやられるばかりで、
「イヤだ…っなおまさ…!」
脚ががくがくと震えとうとう力が抜けて背中からずり落ちた。



「豊久、豊久、」
何度も名前を呼んでくる直政の、その表情を見れば今までに見たことも無い思いつめた顔で、
"ごめん"
辛うじて耳に届く声は震え、目からはじわりと涙まで滲んでいるように見える。


「でも俺、後悔してない」
後悔してないから、
直政のぽろぽろと落ちる涙に拍子抜けした豊久が、
「泣きたいのは俺の方だ」
シャツで涙を拭ってやりながら照れたように軽く睨めば、
軽蔑するものでも嫌悪するものでもないその顔に、
とたんに直政が顔を明るくして嬉しげに抱きついて。
暑苦しいから離せと豊久がわめく。



「とりあえずコレをどうにかしたい」
直政の指の先へ視線をやると、未発達ながら立派に成長した直政のソレが目に付いて。
「知るか!」
自業自得だろう、
途中で刺激を止められたやり場のなさにモジモジと脚を揺らす。
「じゃあ豊久のがすんだら俺のやってくれるよな?」
直政の言葉に豊久の力なき拳が顔面へ走った。






オレンジに染まる空は次第に紫へと色を変えて。







鈴渡セツ/2009.08.26.




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あきゅろす。
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