かみさま、かみさま、
たまに、たまに思ってしまうことがある。
――俺は、ここに居てもいいのか、と。
そんなことを思うと、決まって亡き親友の顔が頭をよぎる。
違う、違うだろう、居場所が欲しくて生きているわけじゃないだろう。望みを叶える為に生きて、今を旅しているんだろう。
毎度そう言い聞かせて、甘えにも似たこの感情を抑え込んむ。
でも、思うんだ、思ってしまうんだ。
一緒に旅をしてくれるフラウと、肩車をされて嬉しそうにはしゃぐカペラを見ると、俺はここに居てもいいのか、不釣り合いなんじゃないのか。こんな、こんな汚い俺に、こんな幸せ要らないんじゃないのかと。
一歩後ろに離れて歩く。境界線を作るかのように。
一人残されたように思ってしまうのは甘えだろうか。離れたくないと、傍にいたいと思うのは甘えだろうか。
(口には出さないだけで、本当は、本当は…)
そんな思考を生み出したのはきっと親友と、この二人のせいだろう。こんな感情、辛いだけじゃないか。そんなことを思ってしまっても、この幸せにも似た時間と、甘えにも似た感情を手離せないのは、きっと、自らが望んでいるからなのだろう。
ちらりと、フラウの顔に視線を向ける。ここからだと表情までは見えないが、その口から発する言葉は楽しげだ。
そんな二人を見ていると、まぶしくて、まぶしくて、目眩がした。
両手でカペラを支えながら、二人の話題は自分の事へと移っていく。やれクソガキ、やれチビ、フラウの口から発せられる言葉は、普段の俺を怒らせるのには簡単な起爆剤だった。
だが、不思議なことになんとも思わなかった。いつもは一発殴りつけているはずなのに、不思議と怒りも沸かなかった。
そんな自分が、不思議でたまらなかった。
フラウも殴られるんじゃないかと身構えていたが、いつもの制裁や罵声も飛んでこないことに不思議に思ったのか、歩みを止めて後ろへ振り向いた。
釣られて俺を脚を止め、フラウを見上げた。
吃驚した。フラウが驚愕した眼差しを向けていたからだ。カペラは眉を寄せ、いかにも心配しているような表情で。
今、自分はどんな顔をしているんだろうか。そんなに酷い顔でもしているんだろうか。
二人が向けるその視線が、思考を固まらせそれ以上のことが考えられなかった。
「…何、泣いてんだよ」
「兄ちゃんどっか痛いの…?」
「え……」
言われるがままに、頬に触れると、ぽたり。ぽたり。涙の雫が頬を伝った。
「あ、れ…?」
いったい自分に何が起こっているんだろう。呆然と立ち尽くしていると、涙を拭っていた手を掴まれ引っ張られた。
躓きそうになる脚を必死に補整し、ズカズカと歩くフラウに視線を向ける。すると、フラウがぶっきらぼうに口を開いた。
「早く泣きやめクソガキ」
心配、されているのか。
カペラはともかく、フラウにも心配されているのだろうか。別に、どこも痛くなければ辛くも…――
「、…っ」
ぽろり。ぽたり。
なんともないと思えば思うほど、涙が溢れて視界が歪む。
片手で溢れる涙を必死で抑えて、もう片方のフラウに掴まれている手を握り返した。
願ってもいいのだろうか、望んでもいいのだろうか。
愛しいと、思ってしまってもいいのだろうか。
泣き顔を見せまいと二人の一歩後ろを歩きながら、俺の手を包むフラウの手に目を細める。
誰よりも優しいその手が、たまらなく愛しい。
俺よりも大きなその手は、冷たいはずなのに、とても温かく感じた。
かみさま、かみさま、
(一分、一秒でもいい、)
(この幸せな時間を、この人と過ごしたいと思うことを、許してください)
またまたシリアスな感じになりました。そして何が書きたかったのか途中で迷子になりました。いまだに帰ってこられません。
手を繋がせないなぁとかテイトくんを泣かせたいなぁとかカペラ出したいなぁとか思って書いてたのですが、なかなか上手く反映されませんでした。
勢いに任せちゃ駄目だよね。
ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。
2010.4.22
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