かなしみのむこうには
(だれ? だれ?
おれをよぶのはだれ?)
瞼が重い。
熱を孕む瞼を持ち上げ、ずっと握り締めていたものを身に寄せた。
ふわりと香るのは俺の世界の全てだった親友の太陽のような優しい香り。
ぽたり、ぽたり。
未だに涸れずに流れる涙を止める術を知らない。俺を泣かすのはいつだって親友だった。
(どうしたら止まる…?)
声など出ない。答えなど返っても来ない。
いつもなら、親友が難しそうな顔をしてなんだかんだで答えてくれるのに。もう、その親友でさえいない。
目が痛い。ヒリヒリと灼けるように。それでもなお止まらない涙を無理矢理止めるように、身に寄せていたのシャツに顔をうずめた。
蝕んでいく、蝕んでいく、じわじわと俺の記憶を。瞳を閉じると再生される親友の最後の姿が。
それでもなおもやもやと、ごわつく脳内の記憶の破片は過去の記憶なのだろう。欠片をつなぎ合わせようとすると激しい頭痛と吐き気がした。思い出せない。
――いや、思い出したくないのか。
過去を、自分を“親友”と言ってくれた親友を、太陽のように明るい親友を塗りつぶされてしまいそうで怖かった。
考えたくない、そんな恐ろしいこと。
もう誰の言葉も聞こえない。何も訊けない。ただ、静寂と自分の呼吸だけが聴こえた。
くしゃり、誰かが俺の髪に触れた。
誰だと確認することすら億劫だった。しかしその手はまるで慰めるように慈しむように触れるものだから、更に涙が溢れた。
“親友が、死んだ”
この馴染みのある親友の香りと、この優しい手のひらがそれを肯定させて、酷く胸が痛んだ。
かなしみのむこうには
(ひとりぼっちの世界で、だれがおれを愛してくれるのだろう)
(少なくとも、この手の持ち主は愛してくれるのだろか)
いつもより短めになっちゃいましたが、ブルピャがくる前のテイト君でした。たまには親友も混ぜてみてもありじゃないのと思って(といってもミカゲ死んじゃってるけど)、でもまあなかなか上手くはいかないのね。泣いてるテイト君書けて楽しかったけど。
ちなみに手のひらの持ち主はフラウです。
こうしてフラテイへと繋がっていくんですね\(^o^)/
2010.4.11
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