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プワソン・ダヴリル







 かまって、かまってかまってかまって、

 ひとりはさみしい。




プワソン・ダヴリル




 穏やかな昼下がり。テイトは、人生の聖書(バイブル)だと自ら豪語するエロ本を読みふけるフラウの背中の上に仰向きで寝転がり、昨日カストルに勧めてもらった本の読書に勤しんでいた。
 ちらり、フラウを見る。こちらの視線に気付く気配すらなく、エロ本を読むことに集中させ、口元を時折にやつかせていた。
 ――おもしろくない。
 テイトは手持ちの本に視線を戻し、活字をスラスラと新しい知識とともに頭の中に押し込んだ。
 しかし暫くして、テイトの視線の先は一定の場所で止まった。そして、にやりと口元に弧を描き、これは試してみる価値がありそうだ、とパタン本を閉じた。
 実に楽しそうだ。

「なーフラウー」
「んー」
「フラウ、ちゃんと聞いてる?」
「あー?なんだよ」
「…あのな、今日ランセ司教にキスされちゃった」

 ページを捲るフラウの手が止まった。しかしまだこちらには振り向かない。
 テイトはさらに続ける。

「ランセ司教ってフラウのこと本当に嫌いなんだな…。俺、腹いせにとかってキスされて…俺……」
「…テイト」
「お前のせいだからなー!」
「お、おちつけテイト」

 ほら、振り向いた。
 やっと振り向いてくれた。

 テイトは振り向いたフラウの首に腕を回して、首筋に頬を埋める。ほんのりと香る煙草の匂いに誘われるように、ひやりと冷たい首筋にかぷりと噛み付いた。

「………」

 今どんな顔をしているのか、フラウの顔を想像するだけで口元が緩む。無言な彼の首筋を今度は舐めたらどう反応するんだろう。
 テイトは身じろぎすらしないフラウの首筋を、今度はペロリと舐めた。

「オイ、」
「なんだよ」
「こっちのセリフだクソガキ。何のつもりだ」
「何って、傷心な俺を慰めて?…みたいな?」
「みたいなってお前…」
 
 べりっと効果音がするかのように接がされた。不機嫌のような、嬉しそうな何とも言えない顔をしているフラウを見て、テイトは緩む口元を抑えきれなかった。

「テイトお前…」
「嘘だよ、嘘。お前以外とキスするわけないだろ?」

 今日は嘘吐いていい日なんだろ?

 緩む口元を手で押さえるテイトに、フラウはひとつ溜め息を落とし、テイトの胸倉を掴んで引き寄せた。

「俺様に嘘吐くとは良い度胸だな」
「だってほら、本に書いてあったんだよ。今日は嘘が許される日だって」
「誰だお前にそんな本渡したのは」
「カストルさん」
「あの眼鏡…」

 あの野郎シメる、と 部屋を出て行こうとするフラウをテイトは慌てて止めようと服を掴んだ。こうなることは望んではいない。

「離せテイト」
「イヤだ…」
「いいから」
「イヤだっつってんだろ! 少しぐらい俺を構えフラウ!」

 声を張り上げ、ぐんっと裾を引っ張ると、今まで抵抗を見せていた力が無くなりそのままフラウに押しつぶされるような形で押し倒され、その際に壁に頭をぶつけてしまった。

「うぅ……いってー」
 
 フラウを睨み上げると、フラウは寸前で壁に手を着いたのか無傷でこちらを見下げていた。しかも口角に笑みを浮かべながら。

「“構え”、ねえ…?」

 ここで自分の発言に気付いたテイトは、顔を真っ赤にして手元にあった枕をフラウの顔面に投げつけた。

「…いってーな、なにすんだよテイト」
「うるせー! わ、わる、わるいかよ…!」
「あ?」

 枕をどけながらテイトを見ると、これでもかと顔を紅潮させて、目を泳がせながら、

「お、おれだって、構って欲しい時ぐらいあるんだよ…」

 口先を尖らせ、照れてるのか困っているのか。自分で言った言葉なのに、テイト本人が一番動揺している様子に、フラウは頭を抱えたくなった。
 ――こいつこんなに可愛かったか?
 目の前にいるのは本当にテイトなのだろうか。いや、このつんけんした性格はまごうことなきテイトなのだが。
 フラウは無性に愛しく思い、たまらずぺしゃりと垂れるようにテイトの上にのしかかった。
 重い。とか、どけよ。とかブツブツ文句を言うものの、何も抵抗する動きが無いのがまた可愛くて、フラウはそのままテイトの心音を聴くように胸に耳を押し当てた。

「構って欲しいんだろ?じゃあ、お前も構え。まず俺を構え」
「は?構えってどうやって…」
「お前からキスするとか?」
「ばっ…!」

 馬鹿じゃねぇの!?と続く言葉を指で止めて、ゴロンと寝返りをうってテイトを上に乗せる。悔しそうに下唇を噛んで睨み付けてくるが、赤くなった顔でやられても怖くもない。
 フラウは誘うように口を開いた。


「構って欲しいんだろ?」


 テイトは自分から仕掛けたことなのに無性に悔しくなって、逃れられない、逃げたくもないこの状況に、少なからず嬉しく思う自分に腹を立てたが、こっちが降参だな、と恥ずかし紛れなのか、勢いに任せてフラウの唇に噛みつくようなキスをした。






(――もう本当に、好きでたまらない)


 


4月1日に間に合わせたかった\(^o^)/
エイプリルフールネタやろうと思ってたのに結果特に反映されずに終わった産物。
我ながら甘く出来たので後悔はしていない。と思う。
けどグダグダ…!うわあああ!\(^o^)/


2010.4.2


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