いとしいと、 ――たまには、素直になるのもいいのかもしれない…。 巡り会えたのが運命だとしたら、今こうして隣に立てるのも偶然ではなく必然的なことだったのだろう。 見た目は悪人面で、エロ司教だし、いつもからかうし、なのにやたらと優しくて、そのくせ自分の傷には触れさせないで。貰ってばかりの俺に、返せるものなんて感謝の言葉しかなくて、それでも笑いかけてくれるお前に何度も救われて。 ――いつの間にか、お前が大切になってた。 だから、その冷たくてあたたかい心に、いつか咲き誇ることが出来たならどんなに幸福なことなのだろうか。なんて。 我が儘でしかないこんな陳腐な考え、フラウには訊かれたくないけれど、俺の中でフラウって人間が、それだけ大切な人になっていた。 「フラウ、」 「なんだ、クソガキ」 「………やっぱいい」 すぐこれだ。いい加減クソガキ言うなってんだエロ司教。人がせっかく素直になろうと思ってたのに。 口には出さないが、その代わり思いっきり睨み付けてやった。フラウは、本当の事を言ったまでだぜ、とからかうように笑う。 本当に質が悪い。 「…で、なんだ?」 「いい、なんか言う気失せた」 「あの程度で怒りを露わにするなんて、本当にガキだな」 「な、うるせえっ」 ケラケラ笑ってるフラウを、いつものように罵ってやろうと顔を上げてフラウを睨み付けようとしたら、その大きな手で視界を遮断され、そしてそのまま髪の毛をグシャグシャにされた。 「うわっ、ちょ…フラウ…!」 止めろよ!と言うはずだった口は、言葉尻とともにそのまま下唇に触れた冷たい感触に奪われた。 「悪かったよ」 「………っ、」 軽い口付けに、熱が顔に集中して自分で解るくらい、熱い。目を塞がれたままで良かった。今解放されたら、フラウの顔をまともに見れやしない。 一先ず落ち着こうと思って、一頻りの沈黙の後、深呼吸をしてフラウの手を離さぬように手で押さえながら、口を開いた。 「……俺、さ」 フラウの手で両目を隠して、ぽつりぽつりと思ってたことを素直に口にする。 いつもお前に貰ってばっかで、何も返せてないけど、ありがとう。 いつも俺の傍にいてくれて、ありがとう。 俺を好きだと言ってくれて、ありがとう。 少なからず驚いているのであろう、気配でわかった。 「それから、…それから、っ」 言葉に詰まって、フラウの手をぎゅうっと握り締めてしまう。目眩を起こしそうなほど顔が熱い。 一つ深呼吸をして、小さく呟いた。 「フラウを好きになれて、よかった」 両目を隠していたフラウの手を少しずつズラして、開けた視界の中でフラウを見つけると、思っていた以上に驚いた顔をしていて、益々俺の顔は熱くなる。 恥ずかしくて、恥ずかしくて、でも、ここまで伝えたのだからと、最後にあの言葉を、フラウをしっかりと見つめて囁いた。 「すき」 「フラウが、好き」 ぽろり。どこから出てきたのか、涙が頬を伝ってフラウの手袋を濡らす。 自分から思いを伝えるのが、こんなに苦しいなんて思ってもみなかった。 好きだと伝えるのが、こんなに苦しくて、いとしくて、せつなくて、幸せなことだなんて思ってもみなかった。 何度も、幾度となく、好き、と口にして、零れる涙はフラウが拭ってくれて。涙で濡れた目元と、つんと痛む鼻先に、小さくキスをくれた。 火照った顔に、フラウの体温は丁度良くて、気持ちが良かった。 「俺も、お前が好きだ」 フラウはそう言って、最後に唇に口付けた。 ほら、また貰ってばかりだ。 いとしいと、 (いつまでも、ずっと…――) フラテイ\(^o^)/素直に告白してみろよテイトくんでした。 付き合ってるのになかなか好きだと言えないテイトくんを書きたかったのに……! 見事にグダグダで終わってしもた\(^o^)/ 甘々目指すとか慣れないことはしないほうがいいね! 2010.1.23 [次へ#] |