◆可愛い嫉妬の後は
※風・綱吉・雲雀兄弟パロ(設定は↑の話と同じです)
――1月1日、元旦。
ざわざわと人が長蛇の列をなす並盛神社。沢田家も初詣で出向いたのだが、一行はまずその列に驚嘆した。
「うわぁ、凄い人だねぇっ!ふぉん兄ちゃんっ、きょうや兄ちゃんっ」
「そうですね。綱吉、迷子にならないよう手を繋ぎましょうか」
「何言ってるの、綱吉と手を繋ぐのは僕の役目だ」
珍しそうにキラキラと目を輝かせる末っ子の綱吉の上で、睨みを効かせるのは長男の風と次男の恭弥。
その隣で家庭教師のリボーンが溜め息をついた。
――沢田家には個性豊かな三兄弟がいる。
長男の風は、一見物静かな好青年であるが、数多の格闘技を会得し、その並外れた強さに並盛の裏社会の人間ですら恐れてられているという噂が常に纏わりつく高校生であったりする。
次男の恭弥は、風同様に並外れた強さを持ち合わせているが、性格は正反対で、トンファーを武器に風紀を乱す輩を片っ端から潰し並盛一体にその名を轟かせている中学生だ。しかし、面持ちが兄の風に似ていることを嫌い、風を嫌っているらしい。
三男の綱吉は…といっても綱吉はまだ小学一年生。幸いなことに、上二人の影響を受けずにすくすくと成長している。だが幼さ故か、その天然さとたまに出るドジっ子ぶりには兄弟のツボを刺激するのか、二人の兄から相当溺愛されて育っている。
「あ!とうもころし!りぼーんっおれ食べたい!」
「“とうもろこし”な、だが…」
「今は駄目ですよ、お詣りしてからにしましょうね、綱吉」
「えーっ」
リボーンの言葉尻を奪うように脇から入ってきた風は、不満そうに尖らせる綱吉の唇ちょんっと摘んだ。
「んむーっ」
「ちょっと、綱吉の可愛い唇に何すんのさ」
「妬いてるのですか?」
「だ れ が !」
「いい加減にしろお前ら、ほら行くぞ」
「あ、まってりぼーん!」
ブラコンも大概にしろよ、とぼそりと呟きリボーンは綱吉の手を引いて列へと続く。風と恭弥は睨み合いながらその後を慌てて続いた。
カラン…カラン…と大きな鈴の音が近付くにつれて綱吉はソワソワと体を揺らし始めた。どうやら自分の順番が間近に迫り、緊張してきたらしい。前の参拝客がいなくなり、沢田一家の番になった。確実お賽銭を投げ入れ、鈴を鳴らした。
綱吉も周りの動作を真似して、手を合わせて、双眸を閉じて祈る。
(今年もみんなと一緒にいれますように。兄ちゃん達みたいに強くなれますようにっ)
ちらりと隣に立つ風の顔を覗く。何やら熱心にお祈りしているのか、その瞳は瞼によって閉じている。
(あ、)
綱吉はハッと思いつき、もう一度双眸を閉じた。
(ふぉん兄ちゃんのお願いが叶いますようにっ)
ぱちりと瞼を開け、ちらりと隣を見上げれば、風が優しい微笑みと共に手を取った。
ほんのりと暖かくて、優しい手。綱吉は胸の当たりがきゅうっと温かくなった。
「行きましょうか」
「うん!」
風のその優しい微笑みに嬉しくなって、綱吉も満面の笑みで返した。
「あ、とうもころし!」
思い出したかのように顔をばっと上げ、風の顔を見ると、クスクスと小さく笑いながらとある方向を指差した。
釣られるように指差した方へ顔を動かすと、そこには恭弥の姿が。
「僕が買ってきたよ、はい綱吉どうぞ」
綱吉がながーくお詣りしてる間に買ってきた、と手にもった袋を綱吉に渡すと、綱吉はそれはもう嬉しそうに恭弥に抱きついた。
「うわぁい!ありがとうきょうや兄ちゃん!」
近くのベンチに腰を掛け、もぐもぐと頬張る綱吉を兄二人は微笑ましく見守る。その光景はなんとも微笑ましい。ただ、綱吉の頭上での攻防戦を除いては。
「兄ちゃんたちは、なんておねがいしたの?」
口の周りにソースがべったりとついたまま、綱吉は二人を見上げた。
純粋に気になるのか、その双眸は輝いていた。
「秘密ですよ」
「願い事は言うと叶わなくなるって言うしね」
ソースついてる、と兄二人は同じタイミングで同じ動作で綱吉の口元をハンカチ拭う。
「どうしても、だめ?」
風と恭弥の服を引っ張って、顔を近付ける。二人曰わくこの動作は綱吉の無意識のおねだりのポーズらしい。二人はどうしたものかと内心呟いて、見上げてくる可愛らしい弟に何も言えずにいた。
先に痺れを切らしたのは綱吉で、いつまで待っても教えてくれない二人を睨んで、ぷいっと丁度「帰るぞー」と呼んでいたリボーンのもとへ走っていった。
リボーンと手を繋いで、綱吉は母に買ってもらった綿あめを頬張っていた。だが、いつもは甘くて美味しいそれも、今日だけは美味しく感じられなかった。
「じゃあ、おれもひみつなんだから」
「…なにがだ?」
「な、なんでもないっ」
いつになくふてくされている綱吉を見て、後ろから付いて来る兄二人をチラリと見た。あの重度のブラコン野郎共が珍しいことをしたもんだ、と心底面白そうにくつくつ笑ってやった。
「…かみさまは、ずるい」
ポツリと小さくこぼれた言葉に、リボーンは耳をやる。
「…ずるい」
気になって、どうしてだ?と訊けば、綱吉は未だに長蛇の列をなす人ごみを視界に入れながら小さく呟いた。
「兄ちゃんの“ひみつ”知ってるんだもん」
おれには教えてくれないんだ、と繋いだ手をぎゅっと握った。
だんだんと泣きそうになる綱吉と正反対に、リボーンは笑いたくなるのを必死で抑えた。
リボーンは綱吉に聞こえるだけの声量で、綱吉を見上げながら呟いた。
「それ、後で二人に言ってやれ」
―――きっと、喜ぶぞ。
「……え?」
どうして?なんで?と聞き返してくる綱吉に、いいから言ってやれと何度も薦める。
兄二人が重度のブラコンなのは分かるが、弟も同じようにブラコンだったとは初めて知った。
リボーンは誰かこの馬鹿兄弟をなんとかしてくれと、信じもしない神様に願った。
可愛い嫉妬の後は
「兄ちゃん、あのね…」
兄弟パロで正月ネタ、でした。
途中何度もデータすっ飛んで書き直ししまくった\(^o^)/
書いてて楽しい兄弟パロ。
もう愛してます三兄弟。というよりショタ綱に愛を注いでます、80%ぐらい。
これからも愛し合ってろよブラコン野郎共\(^o^)/
[*前のお話]
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