春時雨(★山鮫2432)
※同人誌【春時雨】24×32バージョン



『アンタと剣合わせてっと…ヤバい。DVD観て、勃っちまう』

夕日で空が赤と青で混じり合う頃、山本家の所有する道場のなかそう言って山本はスクアーロの返事を待った。
罵られるか、嘲笑うか、殴られるか、もしかしたら口もきかずに離れていくかもしれない。それでもほんのわずかな期待と、自分の勘を信じて告白した。『愛の』とつけるには明け透け過ぎだが、甘い口説き文句など思いつかない。まっすぐに本音をそのままぶつけるしかできない。
困惑と驚愕を混ぜたような表情で山本の言葉を聞いていたスクアーロの脳内は、ショートしそうな勢いで回転していた。
(今更、何を)
数年前から二代目剣帝を名乗るため己に課した100本勝負をおさめたDVDを山本に送りつけていた。もうあと僅かな本数でコンプリートするだろう。郵送で勝手に送りつけ始め、たまに日本を訪れる機会があれば直接押しつけてきた。
いつからかディスクを手渡すときに手合わせをするようになり、回数を重ねる度向けられる視線にこめられた熱が高まっていく山本に気づかないほど鈍くはない。火傷するんじゃないかと思うほどの視線に内心舌打ちをする。
(うぜぇ)
そう思いながら、自分の内にも同じ熱がくすぶっていることもわかっている。

刃を合わせた瞬間の痺れ、筋肉の反応を追う緊張感、相手の刃をかわす最低限の動き、流れる赤い液体の匂い、ギラギラと射抜くような素人離れした視線…思い出すだけでも全身の熱が高まるようだ。

だから、視線から逃げるしかできなかった。受け止めてしまえば歯止めが利かない。今すぐにでも直接熱を感じようと肌に素手で触れて、躊躇いなく一線を越えてしまう。逃げ出すなり偽りの言葉吐くなりができないほど、自分も同じ状況だと自覚している。
そんなスクアーロの反応に山本は逆に煽られてしまう。頬の熱を隠しきれず、ただ耐えるような表情で視線をそらせたスクアーロに山本のたがは易々と外れてしまった。
うつむいた顎を上向かせ視線を合わせれば珍しく揺らいだ銀色の瞳が熱く濡れて見える。
(たまんねぇ…)
殴られてもいいやと開き直り、それでも恐る恐る唇を重ねた。触れるだけの柔らかなキス、何の抵抗もなく重なった唇を僅かに浮かせ噛みつくように強く吸い直す。スクアーロも同じように開いた唇から舌をさしだして誘うように山本の唇を舐めた。
それからはもう相手を気遣うこともできず互いに欲しいまま濃厚なキスを続けた。
山本の手はスクアーロの腰と背中を撫で、スクアーロの手は薄いワイシャツの裾から山本の素肌へとたどり着いた。手袋を外し素手で触れた熱に興奮したのか、キスの合間から抜ける息が甘く響く。
「あんた、エロい」
「てめぇが言うな」
密着する体の変化に頭の奥で警報が鳴っているのに止まらない。止められない。
「やべ、どーしよ」
腰回りを押しつけながら情けなく漏らす山本にスクアーロも同じように体を押しつけてしまう。発火しそうな熱の元が擦れて更に相手を求める。
意を決して山本の手がスクアーロのベルトにかかれば、まるで鏡のようにスクアーロの手も山本のベルトにかかる。キスを続けたまま瞳を薄く開ければ灰色の瞳が自分をまっすぐに見つめていた。
(綺麗だなぁ…)
ベルトをはずしジッパーをおろして下着の上からそろりと触れれば、自分ほどではないがスクアーロも反応し始めている。下着も下へずらし直接触れればキスの合間から震えた声が漏れた。聴覚から刺激された山本はもう片方の手を皮素材のボトムの上から臀部を物欲しげに掴み揉んで撫で回す。慣れない刺激に腰を振るわせキスから逃れ、揺れる瞳で山本を睨む。
「てめっ」
「ごめん、止まんね」
「…んのヤロ」
同じようにベルトを抜きジッパーを下げたが、下着の中で張りつめる堅さにスクアーロは息を詰めた。
(…やべぇなぁ)
素手で下着の上から緩く揉み、目の前の首筋に誘われて鎖骨を噛んだ。小さなうめきに気を良くし、義手を山本の背に回す。
右手は相手のものを愛撫し、山本の左手は臀部から背中へ上がり片手で器用にジャケットを脱がす。薄い白のシャツが現れボタンも外し、ようやくさらされた素肌を手のひらが這う。心臓の上からシャツの中へ入り肌を楽しむ。抵抗はなく義手は肩胛骨をなぞり体重を山本に預けた。
(俺も止まんねぇか)
素手の中で熱く堅さを増すのが自分の熱も上げるようで、弱いだろうところをうまく刺激してやる。自分がされて、感じるところ。
「ちょ、っと、それヤバイ」
切なげな声が耳元で震えた。その声に興奮し腰を合わせて互いのものを重ねる。素手が合わせてそれを擦れば山本の吐息が更に乱れた。
「スク、アー…ロ、それ、イイ…」
(いい声だぁ)
空いた右手はスクアーロの胸へ這い上がり、小さく尖ったそこを突いて指先で擦る。あまり乱れないのを見て左手を再び臀部へ回した。胸と臀部の両方を甘く緩やかに揉み、指先で擦りくぼみを押し上げる。スクアーロの吐息が僅かに乱れ灰の瞳が濡れて頬の赤みが増した。互いに無意識で腰をゆらし快楽を追いながらキスを再開して高みへ上る。
「はっ…ぁあ」
「んっん…あ…」
相手の乱れた声と息に煽られて一気に快楽が増し、山本が先、その顔を見てスクアーロも弾けた。


「…ごめん」
「なにがだぁ」
本気の手合わせで体力を消耗した後の情交で力つきた二人は床に腰を下ろして息を整えた。落ち着いた頃に山本は困ったように小さく言ったが、スクアーロは呆れたように返した。
「俺ものった、同罪だ」
何でもないことのようにスクアーロはため息混じりに続ける。
「嫌ならベルトに触る前に左でぶん殴ってる」
「…あ、うん。でも」
きっかけは自分だから、と小さく続けてスクアーロをまっすぐ見つめる。
「もっと…先もしたい」
「あんだけケツ掴まれて穴触られりゃ嫌でもわかる」
あまりの言いぐさに山本は苦笑いをこぼし、体を拭ったティッシュをまとめてゴミ箱へと立ち上がる。その背を横目にスクアーロは短くため息をもらした。
(…ったく)
確かにきっかけは山本だが、求めていたのはお互い様だ。行動に出るつもりはなかったが、こうなってしまえばもう引き返せないだろう。
しかし、この男はドコまでわかっているのか、まだわからない。
「…なに?」
ペットボトルを二本片手に戻ってきた山本は自分を睨むスクアーロに首を傾げる。
「なにが、欲しい?」
ミネラルウォーターを受け取ったスクアーロに問われて、山本は焦げ茶色の瞳を瞬かせる。少し戸惑いを見せたが、にこりと笑って眉尻を下げる。
「わかってるよ。スクアーロが、ザンザスのものだ、って」
ペットボトルの水を一口飲んでからもう一度スクアーロに向き直る。
「俺だって、ツナがいる」
その言葉にスクアーロは少し驚いた。わかりづらい男だと思っていたが逆だと気づく。
自分と同じ、いたってシンプルなのだ。
それなりに周囲を見て考え最短の道を見つけ、自分が望む道を躊躇いなく選択できる。経験を勘にできる感性がある。
「…続きしたいけど、ダメ?」
「………そのうちな」
拒絶できなかった。ポジションがどうあれ、同じ欲求があるならそのうちにあっさり続きを求めるだろう。
断られなかった山本は満面の笑みを浮かべる。
「さんきゅ」
リップ音のする軽いキスを頬にし、スクアーロの肩に額を乗せて甘えたように囁いた。
「スクアーロ、大好き」
順番がバラバラだろうと彼のボスあたりは突っ込みそうだが、二人には大した問題ではない。
「ったく…物好きな」
そう言いながらスクアーロも目の前の肩に頬を寄せ、山本から見えないよう口角を上げた。
「揃って、なぁ」
「あははっ」
二人でいられる残り僅かな時間をそのまま寄り添って過ごし、次にいつ会えるかもわからないままいつものように山本がスクアーロの背を見送った。
残された新しいディスクを片手に自宅へと戻った山本はデッキの電源を入れながらため息をもらす。
「わかってて置いてってんのか…」
罵られなかったということは、そういうことだろう。
(しばらくはこれで我慢すっか)
悪びれもせずディスクを入れて再生ボタンを押せば先ほど別れた愛しい人が画面に現れる。ヘッドホンから聞こえる彼の怒声を聞きながら、今はただ剣技に見とれる。彼が最も美しく輝く瞬間を鋭い視線で追いながら、続きができる日に思いを馳せた。




★スクアーロの回想のみだった24×32告白(?)シーン。挿入無しでエロくしてみたかった。

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