【第一楽章・不安と誘惑】 僕の名前は、『二宮晶』 夏の日差しが、強くなってきた7月最後の夏。 学校は、終業式。 僕は、そんな終業式を、待っていた生徒の一人。 仲が良い友人達と、別れながら、僕の彼女、川口真奈美に会うため真奈美の、席に向っていた。 真奈美は、机の中を整理していたらしく、テスト用紙やらいろんな物を、紙袋に詰めていた。 (晶) 『よう!真奈美!』 すると真奈美は、 (真奈美) 『うん・・・』 と、そっけない返事を、返してくる。 (晶) 『手伝おうか?』 (真奈美) 『いい・・・』 (晶) 『そっか・・・なら!』 (真奈美) 『いいから!先に、校門で待ってて!』 と、言われてしまった。 仕方なく校門に行こうと、すると、真奈美と僕の共通の友人『羽田美香』が、話し掛けてきた。 (美香) 『やっほぅ♪あきらん♪』 (晶) 『・・・』 (美香) 『あれあれ?どうしたのかなぁ〜?あきらきゅん?もしかして・・・まなりんに、嫌われたのかなぁ?』 (晶) 『違うよ!・・・多分・・・』 (美香) 『あれれれ?いつもなら・・・「違うよ!」で、終わるのに・・・』 (晶) 『・・・』 (美香) 『・・・』 (美香) 『・・・ねぇ?・・・晶・・・何かあったの?』 (晶) 『・・・別に』 (美香) 『ふ〜ん・・・ねぇ?・・・ちょっと来てよ』 すると、有無を言わさず学校の、講堂の、人気のないところに、連れてこられた。 (晶) 『な!何でこんなとこに・・・てか握ってる手離して・・・』 (美香) 『・・・』 すると・・・美香は、握ってる手に、力を入れてきた。 (晶) 『いっ!!痛い痛い!美香痛いよ!手を、離してくれよ!・・・いきなりどうしたんだよ!』 (美香) 『・・・』 すると・・・美香は、僕の腕を壁に押しつけて体を、寄せてきた。 (晶) 『・・・くっ!みっ美香!何のつもりだよ!』 (美香) 『・・・』 そして・・・僕の唇に、暖かい感触・・・美香は・・・僕に、キスをした・・・僕は、すぐに終わると思った・・・ しかし・・・1分・・・2分3分・・・長く長くキスの嵐が続いた・・・ 僕は、頭が空白になっていた。 何故。美香は、こんな事を・・・ そして・・・美香は、そのまま抱きついてきた・・・ その時・・・僕は何故か抵抗しなかった・・・ そのせいで、事態は誰も予想しなかった最悪な方向に、向かっていった・・・ ドサッ!っと鈍い音がした。 そこには・・・紙袋。 そして・・・そこにいたのは・・・ (???) 『・・・!?あっ・・・晶君!?なっなんで美香ちゃんと・・・』 ・・・僕の恋人・・・真奈美が居た。 (晶) 『・・・!?んんん!んん・・・』 僕は、美香に口を塞がれてうまく喋れなかった・・・美香は、一体何のつもりなんだ・・・ (真奈美) 『どっ・・・どいう事なの・・・』 (美香) 『見てのままよ!』 (真奈美) 『・・・見てのま・・・ま・・・?』 (美香) 『そうよ!前から私は、晶と付き合ってるの!だからこうして・・・』 なっ!何で美香は嘘を? (真奈美) 『イヤ!それ以上言わないで!!いくら晶君・・・美香ちゃんでも、ヒドイよ!』 違う! しかし言葉に、ならなかった・・・ そして・・・ (真奈美) 『なんで・・・晶君・・・抵抗しないの?私が、彼女じゃないの?それとも・・・私とは、お遊びだったの?・・・』 いつも優しい真奈美が、泣きながら暗い笑顔で、言った。 (晶) 『・・・違う!』 いきなり美香が、口から手を離した。 (真奈美) 『何が違うの?・・・抱き合ってたじゃない!・・・はぁ〜あ・・・もう良いよ・・・疲れたよ・・・いままで楽しかったよ・・・さよなら・・・晶君』 そして・・・真奈美は走って行った・・・最後に何故か笑顔で・・・ (晶) 『真奈美!』 僕は、美香を睨み付けた。しかし・・・そこには・・・美香の姿は、無かった・・・ 真奈美が、走って行った方向を見ると・・・あの紙袋。 僕は、真奈美に謝るついでに、紙袋を持っていった。 【PM13:20】 【場所・通学路】 【進行人物・川口真奈美】 何で?何でなの・・・嘘でしょ・・・晶君と美香・・・ちゃんが付き合ってるなんて・・・もし嘘でも・・・なんで晶君は、抵抗しなかったんだろう? やっぱり美香ちゃんが、好きなのかな?それとも・・・美香ちゃんが・・・ だったら美香ちゃんは、いつも私と晶君が、喋っているところを、見てて妬いて・・・だとしたら・・・私ってヒドイ人・・・? 美香ちゃんの、気持ちも知らないで・・・ すると・・・ 私の歩いてる反対側の歩道から・・・ 晶君の声がした。 (晶) 『真奈美ぃ〜!』 しかし・・・私は、無視をした・・・ すると晶君が大声で・・・ (晶) 『真奈美聞いてくれ!僕は、真奈美の事一番好きなんだぁー!!!』 いきなり大声で言う晶君に、周りを歩いていた通行人が、みんな私の方に、視線を向けた。 しかし私は・・・恥ずかしながらも、嬉しくなり晶君の所に、走って行った・・・ しかし・・・ (晶) 『真奈美!危ない!!』 (通行人) 『きゃあぁぁぁ!』 (真奈美) 『えっ?・・・』 振り向いた先には・・・ (キイィィィ!!!) (ドォン!・・・) ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 宙を舞う私・・・ そして・・・ 目の前を白いトラックが、通過していった・・・ そして、仰向けの私に、覆いかぶさるように上に居た・・・晶君・・・ (晶) 『ふぅ〜・・・真奈美大丈夫か?怪我とかないか?』 (真奈美) 『・・・うん』 (晶) 『よかったぁ〜!』 そして、トラックの運転手さんが、やって来た。 (運転手) 『大丈夫か!君たち!』 (晶) 『大丈夫ですよ』 (運転手) 『そうかぁ〜・・・そりゃよかったぁ〜・・・ふぅ〜・・・それにしても、お嬢さん危ないじゃないか!いきなり飛び出してきちゃ!』 (真奈美) 『ごっ・・・ごめんなさい!』 (運転手) 『まっ!いいさ・・・怪我が無くて・・・おじさんも、死ぬかと思ったよ。とにかくこれからは、気を付けてね』 (真奈美) 『はい・・・気を付けます・・・』 (運転手) 『それにしても、君なかなか格好良いじゃないかぁ!お嬢さんを助けたりしてぇ〜もしかして・・・君たちカップルかい?』 (晶・真奈美) 『はっ・・・はい♪』 (運転手) 『はっはははは!そうかいそうかい!声までそろってまさに、意気が合うカップルだなぁ!』 (晶・真奈美) 『・・・』 (運転手) 『二人ともぅ顔が、赤いよ!んじゃ・・・おじさんもう行っていいかな?』 (晶・真奈美) 『もぅ!早く行ってください・・・恥ずかしいじゃないですか!』 (運転手) 『はっはははは!そうかそうか!んじゃ失敬!帰り道気を付けてな!』 変わった運転手さんだった・・・でも・・・晶君が、私を助けてくれたなんて♪すごく嬉しかった! もし、晶君が居なかったら私は・・・トラックに引かれていた・・・ そして、私は、この後足を挫いている事に気付き。晶君に、背をわれて家まで、帰っていった。 【PM23:42】 【場所・川口家(真奈美部屋)】 【進行人物・川口真奈美】 痛っ! やっぱり痛いなぁ・・・青くなってるし・・・やっぱり病院に、行ったほうが良いかな・・・ でも・・・こんな遅くに病院やってないし・・・ 湿布でも貼って、様子みようかな? と言う事で・・・湿布が、入ってる救急箱を探しに、一階の居間に降りた。 えっと・・・救急箱・・・はぁっと・・・あったあった! 湿布を見つけて足に貼った。 (???) 『たわぁいまぁ〜・・・』 あっ!父が、帰ってきた。今日もかなり酔っ払っているようだ・・・ 私の、家族は父と娘の私だけ・・・ちなみに母は、父の浮気で離婚・・・名前は『川口正彰』 いまだに父は、未練があるらしく・・・私を見ては、母と間違える・・・そして・・・この頃接し方が、エスカレートしている。 前なんか・・・一つ間違えれば・・・犯罪レベル・・・私が、寝ているときに、いきなり覆いかぶさり抱きついてきたからだ・・・呆れる程、母と間違えて襲おうとしてくる・・・そんな私の対処法は、合気道。 父が、怪我をしないぐらいに、止(とど)めて我に返る時を、待つ・・・そして引きずって父の部屋の布団まで、ズルズル運ぶ。 それでいつも対処している。 だから・・・いつも父には、苦労させられる・・・ ちなみに、私には、もう一人家族が、居た・・・私の生き別れの双子の妹・・・ 『琴音』 顔は、知らないけど私に似ているらしい・・・。 一度会いたいのだが・・・父が会わせてくれない・・・ (父) 『琴美!帰ったぞぅ〜♪・・・』 今日も間違えてる・・・ ちなみに、琴美とは、私の元母『珊瑚琴美』の事。 そして、私と琴音の名前も、母から来ている。 (真奈美) 『おかえりお父さん・・・』 (父) 『琴美!お帰りのキスは?』 (真奈美) 『・・・』 私は、呆れて自分の部屋に戻った。 そして、ベットに潜って眠った。 【AM0:03】 【場所・二宮家(晶部屋)】 【進行人物・二宮晶】 ふぅ〜・・・昨日は・・・疲れたなぁ・・・俺は俺で、大変だったし。 美香は・・・変だったし・・・ 真奈美は・・・傷ついたり、交通事故にあいかけたり・・・ 本当疲れたよぅ・・・ と、その時・・・ (???) 『晶ぁ〜!電話だよぅ!』 姉さんが僕を呼んだ。 ちなみに、姉さんの名前は、『二宮美紀』と言う。 いつも優しい、良いお姉さんだ。 (晶) 『はぁ〜い今行くよ』 こんな時間に、一体誰なんだ? 僕は、一階の電話機のところに、急いだ。 (晶) 『誰から?』 (美紀) 『美香ちゃんからよ・・・なんか泣いてるみたいだけど・・・はい』 美香から・・・か (晶) 『はい・・・』 (美香) 『・・・ごめんなさい!』 (晶) 『あぁ・・・んでなんであんな事やったり言ったりしたんだ?真奈美ひどく傷ついてたぞ』 (美香) 『・・・晶が、可哀想だったから・・・真奈美ちゃん・・・晶に、冷たくなったし・・・また、愛し合ってる晶と、真奈美ちゃんが、見たくて・・・それで、恋敵みたいに、したら・・・また・・・ラブラブになるかと思って・・・ごめんなさい・・・勝手な事言って・・・』 (晶) 『えっ?そんな事を、思ってたのかよ!美香・・・考えすぎだよ・・・美香の思ってる様な事は、絶対無いよ!真奈美は、冷たくないよ・・・ただあの時は、忙しかっただけだよ・・・でも、キスとかやりすぎなんじゃ・・・』 すると美香は・・・ (美香) 『だって・・・私・・・晶の事・・・ずっと前から・・・すっ・・・好きなの!・・・・・・ごめん・・・変な事言って・・・切るね・・・おやすみ・・・』 (ブツッ・・・ツーツー) 美香は、一方的に電話を、切った。 ・・・美香が、僕の事を好き?・・・でも・・・なんで今更言うんだ? ・・・もぅ・・・解んないよぉ!・・・ 僕は、真奈美が好きなのか?美香が好きなのか解らなくなっていった・・・ そして・・・今日の朝・・・史上最悪の運命を辿るとは、この時の僕は、思うはずが無かった・・・。 永遠に、帰ってこない愛しい人・・・。 【第一楽章・不安と誘惑】終わり 【最終楽章・最後の再会】につづく・・・ |