僕らのお姫様
01
「やっと、到着ー。確か此処だよね、スク隊長?」
「ああ。此処だぁ」
無駄に広いボンゴレ本部にやっと着いた。車で行けば20分もかからねぇのに、徒歩で1時間近くかけての到着だぁ。
此処に着くまで、アイスだの飴だの……どんだけ買わされたと思ってんだぁ! 財布忘れちゃったのーとか絶対に嘘だろぉ!!
当の本人は、髪を揺らしながら歩いている。
因みに、その髪を纏めているゴム紐もオレが買った、買わされたもんだぁ。
銀色に輝く十字架のシルバーアクセサリー付き。
まぁ……ルビに似合っていると思う。
* * *
「ねぇ、何でこんな所から入るの? 侵入者みたい」
こんな所=草木が覆い茂った柵の上。
柵の上に既に登ったオレは、ぶつくさ言うルビの手を引っ張っている。
下から押し上げようとしたが……その、コイツ今日はスカートはいているからなぁ。――本人は気にせずに大股広げてよじ登ろうとしていたが。
何故こんな所から侵入するのか聞かれ、前に本部に用があった時の事を思い出した。1人の案内人がずっと着いてきたのは……鬱陶しかったぜぇ。
「正門から入っ
たら硬っ苦しい歓迎されんだよ」
「えー、Vipな感じでいいのになぁー」
Vipには見張りなんてつかねぇ、護衛がつくもんだ。あの案内人は、雰囲気から何からして見張りって感じだったからなぁ。
「うるせぇ、大きい声出すんじゃねぇよ。静かにしろぉ」
「はっ、お言葉ながら隊長の方がうるせぇであります!」
「お前の方がうるせぇ!」
お前じゃないしールビだしー、と呟き初めた隣のガキ。
デジャブだなぁ、その台詞。
「誰かそこに居るのか?」
ほらみろ、騒ぐから見付かったじゃねぇか。
金属の擦れる音が聞こえる。状況的にどう考えても銃。
空気が一瞬にして張り詰めた。……ガキの周りはどうだか知らないが。
今日は生憎と刀付けてねぇし、大事にするとめんどくせぇし……どうしたもんか。
「うぉぉおい!!」
考えていると、いきなりルビが叫んだ。少しビクつく。
……ってか、何してんだぁぁあ!!
゛ボカッ″
「何言ってんだぁ!」
「いだっ! 殴らなくても良いじゃない! 鮫の真似してごまかそうかなぁ、て思ったのにぃー」
頭を押さえて涙目のルビ。義手の方じゃなくて、有り難く思えっ!
とにかく、この突っ込み満載の勘違いヤローをどうにかしねぇとなぁ。
「いいかぁ……鮫はこんな所に居ねぇし、うぉぉいなんて言わねぇ、そもそも言えてねぇ、うぉぉいじゃなくて……う゛ぉぉおいだ、う゛ぉぉおい!!」
分かったかぁ! と叫ぶ。少し、息切れが、するぜぇ。
「お疲れ様であります、スク隊長。」
………
おちょくってんのかぁ? このガキがぁ!
「早く囲め!」
馬鹿な事をやっていた隙に、明らかにあっちの敵が増えた。
がちゃがちゃと聞こえる。見ろよ、こっちの方がある意味Vipだぜぇ?
「……ニャーン」
「やるのがおせぇよっ」
チッ、退避だ退避っ。
一旦門の外に出た。何やってんだぁ、オレ達は……。
取り敢えず、騒ぎが収まるまで街でもうろついておくかぁ。
オレは、財布を摩った。
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