僕らのお姫様
01
「老いぼれの所にコレ渡して来い」
XANXUSに呼び出され部屋へ行くと、入るなり書類を投げつけられた。
……う゛ぉぉおい、朝っぱらから起こしておいてこの扱いは何なんだ。
オレは知らねぇぞ。こんな労い方なんてなぁ!
キッと睨みつけるが、効果無し。流石はボスだ。
まぁ、グラスよりはマシか……。
何処ぞの女子高生みたく朝シャンなんて、柄じゃねぇ。
仕方無しに、オレは大人しく書類を受け取った。
状況的にかき集めたって表現の方が近い気もするけれど。
* * *
「あっ! スク隊長おはよー」
「………」
支度をする為に自室に戻ったオレは、直ぐさまにドアを閉めたくなった。
原因はコイツ、上機嫌にベッドで跳びはねているルビ。
しかも、呑気な声の鼻歌付き。
一応、確認するが此処はオレの部屋だぁ……!
「人の部屋で何やってんだ。お前……」
「人の部屋じゃなくて、鮫の部屋だよ。スク隊長ー」
「ぶった切るぞぉ、このチビがぁ!」
チビじゃないしー、ルビだしーと呟く光景は、何処ぞの王子そっくりだ。
最近あいつに似てきたな……。
そう考えたら無性にゾクリとした。
「いいかぁ、もう一度聞いてやる。何で此処に居るんだぁ?」
「なぁに、教えて欲しいの? あのねぇ……ボスがスクと一緒にお使いに行って来いって、外に出ても良いって言ったの! だから来てやったんだよー」
あ゛ー
何か引っ掛かる言い方だがスルーだ、スルー。
何時ものことだ。一々気にしていたら話が進まねぇよ。
「って……オレと一緒に行く、だとぉ?」
「そうですよー、スク隊長っ」
ニッコリ笑うルビ。
きっと今日はアレだな、アレ……。
ジャポーネで云うところの「仏滅」って日だぁ……。
* * *
「うわぁ、見て! スク隊長っ」
「ああ?」
街を歩いてみたいっ、といううるせぇくらいのルビの要望によって道を歩いているといきなり髪を掴まれた。
興奮気味のルビが指している先には赤やら黄色やらのカラフルな店が建っている。
……なんか見たことあるな、あの店。
視線を落とすとルビは今だに髪を掴んでクレープ、クレープと連呼していた。
ガキか、コイツは……。
今更だが、よくヴァリアーに入隊出来たもんだな、オレなら直ぐに落としてやるぜぇ……ある意味アッパレだぁ。
「此処ね、美味しいんだよっ。スク隊長っ!」
どうやら、あの店はここらでは結構有名なクレープの店らしい。そう言われてみれば、オカマヤローの持っていた雑誌に掲載されていたような気がする。
――5分後、チビの持ち物が一つ増えて、オレの財布は少し軽くなった――
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