僕らのお姫様
01
「ねぇ、お兄ちゃん。私ね、ずっとやってみたかった事があるんだ。」
「何?いきなり真剣な顔してさぁ。」
「それはね―――なの。」
ルビの言葉を聞いた瞬間ベルの顔がサッと青ざめた。もっとも、顔下半分しか見えないが…
「いや…それは流石にヤバすぎでしょ…。」
「大丈夫!だって私姫だもん♪…ほら、お兄ちゃんは?」
「お、王子…だけど?」
気が動転しているのか、何時もの台詞に疑問符がくっついている。
「ほらね?Let'sチャレンジ!」
「王子知らねぇ〜!」
遂にベルは頭を抱えた。
* * *
作戦は、朝早くから始まった。目指すはアジトの厨房。冷蔵庫の中に確かアレがあるハズ!
ガサゴソと探り、アレを探す。
「みーっけた。ボスのウイスキー!」
「マジでやんの?」
未だに気乗りしないベル。
「マジもマジ!本気と書いてマジと読むの!!」
…無駄にハイテンション。こいつ、朝っぱらの任務はローテンションのくせに…。
「取り敢えず、中身どうする?空にしないと…。」
そう、今から二人がする事(一人は嫌々だが…)
その名は
『ボスのウイスキーすり替えちゃえ作戦』
「中身捨てちゃえば?」
ここまできては後に引けないと思ったのか、だんだんヤケになってきたベル。
「あっ、そうしよっか♪」
ルビは、それを聞いていかにも高級そうなウイスキーを流しへ、ポイした。
「王子…知ーらね。」
ブツブツ呟きながらペットボトルをルビに手渡すベル。中にはアレがたっぷり入っている。
ルビはニヤリと笑みを浮かべた。
* * *
次の日、ルビはドキドキしながらボスやら幹部やらが集まる部屋に向かった。
もう皆集まっていて、ボスもいる。
ジッとボスの様子を観察するルビ。その目には期待の色が浮かんでいた。
対照的にベルは不安な表情。(前髪で隠れていてハッキリとは分からないが、への字に曲げられた口元からして間違いない)
そんな二人がの視線が交差する中、昨日仕掛けた偽ウイスキーをボスは
普通に口に含み、飲んだ。
これにはルビもベルもびっくりする。
「おい…普通に飲んでるぜ?!」
「そんなぁ!ちゃんとりんご酢入れたのに!…もしかして、ボスって味オンチなわけ?! 」
そんなことを言ってる間にもボスは一口、二口と飲んでいく。
その姿はまるで、水でも飲んでいるのかと間違う程。
「有り得ねぇ…。」
そしてとうとう全て飲み干した。
「ブハッ。今日のは味が少し違ったようだが…何かのブランドか?」
「(ボス〜!?それブランドもなにもりんご酢だよ(だぜ)?!)」
二人の心の声が見事にシンクロした瞬間だった。
流石、兄妹。
「まさかの展開だぜ?」
ここまで来ると驚きを通り越して不気味…。
「ボス!どうしたんですかっ!」
ザンザスにとっては何の事やら分からないルビの言葉。
あぁ?とザンザスは首を傾げた。
「どうもしねぇが…ッショイ!」
何気に可愛いくしゃみに、先程は気付かなかったが鼻声…。
これはもしかして…
「ボスもしかして風邪ぇ?!」
「あぁ?…ッシェイ!風邪なんて引いてねぇ…ッチョイ!」
…あっ、完全に風邪だ…。
まさか、それで匂いも味にも気付かなかったのでは?…って、味は気付くだろう?!
少々…いやかなり不思議だが、風邪のザンザスに変なモノを飲ませてしまい、少し罪悪感が沸くルビとベルだった。
風邪にご用心
(…ねぇ、ジャポーネにさぁ、知らぬな、ほっとけって言葉あるよね?)(散らぬが仏な)(二人とも、知らぬが仏よ…。)((あっ、ルッスー))
翌日、ザンザスはいきなり原因不明の腹痛に襲われ、数日間寝込んだ。
因みに、怒ったザンザスにより、アジトが半壊した事件は更に数日後…。
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