代 わ り 借り物競争というのは、一番にゴールしたからといって一位の点数がそのまま入るわけではない。借り物をちゃんと持って来れたかどうかが重要なのだ。 自分が合っていると思っていても、審査する係が合っていないと判断すれば合っていないのだ。 そして今、審査する係の木内は、恐喝紛いをされている。 「い、いや…これは流石に」 「何でだよ。借りる物は『葉細咲棗』で、俺は葉細咲。間違ってないじゃねぇか!」 「いやいや…先輩は村田先輩でしょう!」 「ぁあ?この体操服の文字が見えねえのかよ!?」 「明らかにサイズ合ってないじゃないですか!」 つまり、今村田騎羽は葉細咲棗になっていた。 体操服の右胸辺りには『葉細咲棗』の文字が刺繍されている。葉細咲の体操服を村田が着ている。だから村田ではなく葉細咲というわけなのだが。 これは、無理があるだろう。 村田の後ろにいる忍野は、非常に居心地悪そうにしていた。本音を言うなら逃げ出したい。 取り敢えず、何か言うならば。 どうしてこうなった。 前次 |