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時速200km
 



「はあっ!」

ビュッ  ドン!

「でやあっ!」

シュッ  バシッ!


白熱も白熱。
葵と速水が中心となって、凄まじい打ち合いをしている。他の奴らはそれを呆然と見ているだけ。
互いに内野の数が減っていき、残ったのはそれぞれ3人ずつ。どちらも、組の強者が残っているらしい。その3人ずつの中には、葵と速水もいる。

「いい加減当たれっ!」

葵の言うように、ここまで順調に当てていたのが、ボールを捕られるようになっていた。相手に当たらず、時間だけが過ぎていく。

「…これ、アレじゃね?俺達省略されるフラグじゃね?」

「フラグ完全に立ってるよ」

次の試合として待機している吉岡と海田が心配そうに話し合う。
ドッジボールで結構話数が進んでいる。これが最後だろう。そろそろ決着をつけなければ。そんな雰囲気がグラウンド中に漂っている。

その間にも時間は刻々と過ぎていく。もしこのまま3対3で時間が来てしまえば、サドンデスが始まる。それだけは避けなければならない。

「やべっ、行き過ぎ…!」

そんな中、外野にいた伊藤の投げたボールが弧を描いた。内野にパスする筈のボールは、通り越して相手チーム−1組の外野に渡る。取ったのは紅林。

「よし、良いぞ愛加!こっちにパスだ!」

そう葵が言うのと同時に、俺達赤組が盛り上がる。残り時間は少ない。チャンスが来るのは嬉しいのだ。

「やべえぞ、速水…!」

「いや、愛加ちゃんの投げるボールだし…誰か跳んでキャッチしよう」

対する3組は冷静だ。
速水は試合開始すぐに、葵が外野にパスしようとしたボールを跳んでキャッチしたことがある。紅林の投げるボールなら、もっと簡単に取れるだろう。そういう判断だった。

残り時間は10秒。

「…やく」

「え?」

俯いてボールを見たままの紅林が何か呟くが、誰も聞き取れない。
頭を上げた紅林は、明らかに怒っていた。そのまま振りかぶる。




「早く決着つけろってんだぁぁあああ!」




シュゴッ!!

紅林の投げたボールは、ミサイルのような音を立てて真っ直ぐ飛んできた。

「なっ…!?」

キャッチの係になったのだろう、紅林の前にいた3組のガタイが良い男子は引きつったような声を出す。
ボールは彼の腹に突っ込んでいく。

ドゴオオオンッ!!

「ぎゃああああ!」

男子はボールと共に吹っ飛んだ。
その体は1組の内野を通り越し、3組の外野の後ろあたりまで飛んだ。
そのまま動かない。


『…………』


グラウンド中の動きが止まった。
俺も、花鳥も、葉細咲先輩も、転んだ怪我の手当てをしている久賀も、あの帷学園長でさえも、目を見開いてその光景を見ていた。
吹っ飛んだ男子の脇に転がるボールは、未だに煙を出している。何故。

 一番最初に動いたのは、最初にボールを投げた尾崎先生だった。ハッと気付き、青井先生を軽く叩く。我に返った青井先生は一応時計を確認してから笛を吹いた。

ピーッ!

「え…っと、3対2で1組の勝ち!」

ワーッ!…と盛り上がる奴らは、今回ばかりはいなかった。


 



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