少しの不安 花鳥が工事現場にいそうな食堂のおばさん…否、おじさん達のファンだと知ってから数分後、俺と久々里はラーメンを持って帰ってきた彼を迎えた。心なしか表情が明るいのは…きっと、見間違いじゃないだろう。ラーメンを受け取りながらそう思った。 食堂内を見渡すと、ブンブンと手を振る竹田の姿が見えた。向かいには青色の髪を持つ生徒が座っている。あの人が竹田の友人か。 「よーう忍野、暫くぶりー!」 「よーう悪魔族、暫くぶりー」 「遊○王!?」 「遊戯○とは限らないんじゃないか?」 竹田の突っ込みに、久々里が無表情でコメントする。青色少年が「気になる所ってそこなんだ…?」と呟いた。 「まあ、○戯王はおいといて…」 「竹田が言ったんだろう?」 「花鳥ちょっと黙れ!とにかく、忍野と二宮は初対面だろ?自己紹介しとけよ」 「今、自分のこと棚に上げたよね」 「二宮、俺の気持ちを察しろ!」 二宮と呼ばれた青色少年が「ゴメン、察したくは無いかな」と言うと、竹田は椅子の上で体育座りをしてヘコんだ。 何コイツ、まさかの不憫? 「まあ、竹田は放っておいて。忍野裕樹、だったよね?僕は竹田と同じクラスの二宮若葉。よろしく」 ニコニコと人懐っこい笑みを向けられ、こちらも自然と笑顔になる。 「ああ、よろしく」 「放っておいて」と言わずとも、花鳥や久々里は竹田をスルーしていた気がする。 こいつら、スルースキルが高い。 暫くしたら竹田が立ち直ったので、俺たちは漸く昼飯となった。さっき「ラーメンで良いか」の問いに軽くOKの返事をしたが、まさか5人揃ってラーメンだとは思わなかった。1つのテーブルにラーメンが5つ並んでいる図というのは、パッと見驚くだろう。 「…さーって、少し気になる事があるんだけど」 ラーメンのスープを一口飲んだ所で、二宮が切り出した。 「どうした?」 箸で麺を一本だけつまんだ状態で、久々里が顔をあげた。箸を使うのが苦手なのかと思ったが、どうやら違うらしい。 「久々里、麺を一本ずつ食べるのやめないか?思った以上にイラつく」 「え、何で?」 「何でも。…まあ、それこそ置いといて、忍野についてなんだけど」 「え、俺?」 素晴らしい味のスープやツヤツヤ光る麺…という、クオリティの高いラーメンに感動していた俺は、いきなり話を振られて慌てて顔を上げた。 「そう。…忍野は、能力を持ってないんだよな?」 「え?ああ、そうだけど」 何度も言うが、能力というのは俺のいた世界に存在しない。ゲームで見るようなコイツらの力が実際にあったら、世紀の大発見として世界中で騒がれているだろう。 「…それなら、体育は出ないのかな」 「体育?」 「え?あ、そっか」 「まあ、出れないよな」 「確かに」 「いやお前ら何の話だ」 二宮の呟きに竹田達は納得するが、俺には全く分からない。体育が一体何なんだ? 前次 |