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屑籠
2

「へぇ、楽しそうなことしてるじゃん。」
突如放たれた声。
見ればそこには燃える様な色の髪をした青年が立っていた。
アッシュと同じくらいの歳だと思われる。しかし着ている軍服は他の兵士達とは明らかに違い、位の高い者が身に着けるものだった。
「しょ、少佐!何故此所に!?」
兵士の一人は青年の姿を見るなり驚き、思わず問いを口にする。さらにもう一人の兵士も明らかに様子が変わり動揺していた。
「あ?任務が早く終わったから、暇つぶしに拷問手伝おうかと思ってな…で、こいつは?」
青年が尋ねると側にいた兵士が慌てて答える。
「はっ、キムラスカの小隊の隊長のようです。戦線で一人倒れていたので捕虜にしました。」
「ふ〜ん…」
がっと顎を掴まれ青年の顔が近付く。
自分と似た翡翠の眸。
それが真っ直ぐに全身を貫いてくる。
だがその色はアッシュのとは違い底知れぬ闇が蠢いていた。
兵士達が何故それ程までにこの青年を恐れているのかが分かった気がした。
その視線に負けじと、ありったけの殺気を込めて目の前の青年を睨み付ける。
青年はそんなアッシュの様子にふっと鼻で笑う。
「なかないい目してるなぁ…気に入った!なあ、お前俺を抱く気はないか?」
「なっ…!」
いきなりの問い掛けに訳が分からず混乱する。
横にいた兵士も慌てて口を挟む。
「お待ち下さい!この男からはキムラスカの情報を聞き出さなければならないんですよ!?」
そんな兵士に青年は鬱陶しそうに答える。
「いいじゃねぇか、拷問用の捕虜なんてまた捕まえれば。それに他の捕虜もいるだろう?最近巧い捕虜がいなくて欲求不満なんだよ…」
「お、お言葉ですが、隊長クラスなど草々捕まるものではありません!そ、それに捕虜に選ばせる等…あってはならない事です!」
仕事に忠実な兵士はなかなか引き下がらない、だが明らかに恐怖の色が伺えた。
食い下がる兵士に青年はイライラしたように頭を掻く。
「はぁ…いいか?こいつの目見ろよ。こいつはどんだけやっても何も吐かないと思うぜ?国家に忠実で強情で、国の損より自分の死を選ぶタイプ。だから幾ら痛め付けて嬲っても絶対に口を割らない。そのうち体の限界が来て死んじまう。だから拷問しても楽しくねぇし、するだけ無駄なんだよ。まあ、こいつが拷問選ぶんなら俺も手伝うけどな…分かったか?もういいだろ?」
青年はかなり不機嫌になっていた。
それに気付いたもう一人の兵士が止めに入ろうとするが、青年に食い下がる兵士は意地になり尚も続ける。
「駄目です!そ、それに…少佐はもう何人も捕虜を連れて言ったじゃありませんか!いい加減になさって下さい!大体…」
言葉を言い終えないうちに兵士の首に冷たい何かが触れた。
しかし兵士がそれを感じ取る前にドサッと床に何かが落ちる。
アッシュがその物体が何であるか理解すると同時に物体が切り取られたであろう断面から真っ赤な鮮血が吹き出しアッシュや青年、他の者達を彩る。
辺りに鮮やかな模様を描きながら、司令塔を失った体は力が抜けてゆき、ゆっくりと傾きその場に崩れ落ちた。
血飛沫を浴びる青年。
見ればその手には剣が握られていた。
腰の鞘から抜かれたであろうその剣からは今尚部屋を彩り続けているのと同じものが滴っている。
その場にいた誰もが一瞬、何が起ったのか理解出来なかった。
青年は、冷めて光が完全に無くなった目で、先程まで自分と言い争っていた兵士だったものを見ると、その体を躊躇い無く踏み付け吐き捨てる。
「お前、"黙れ"と言ったのが聞こえなかったのか?上官命令無視でこの場で処刑。はっ、当然だな。」
青年が放つ殺気。
それは先程まで全く感じられなかったのが信じられない程常人のものとは桁外れていた。
身動きひとつすれば命が奪い去られる。
そんな刺す様な空気が全身から染み込んでくる。
目の前で上官に同僚を殺された兵士はまだ起こったことが理解出来ないのか、はたまた恐怖で動けないのか口を開けたまま微動だにせず固まっていた。




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あきゅろす。
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