本当にあった(ら)怖い話(蔵ニキ)


朝チュン!


ぼさぼさの髪の蔵ノ助は朝陽に瞼を焼かれてむくりと起き上がる。

(…喉渇いた…)

蔵ノ助はいつも通りベッド脇にある部屋用の小さい冷蔵庫に手を伸ばしてマックスコーヒーを取…り出せる筈なのだが、何故か左手は冷蔵庫の取っ手を掴めずに空振った。

(……あぁ、今日はこいつン家だったか)

眠気覚ましに頭をわしわしと掻きつつ、
寝ぼけ眼で傍らの膨らみを叩く。

「ニッキ…のみもン…」

「ぐー」

ゆさ。

「ぉぃ」

ゆさゆさ。

「むにゃ…ぅー」

ゆさゆさゆさ。

「おい」

「っせぇぁ…ンだょ…」

ニッキーがごろりと仰向けになる。
当然ながら呂律がまわっていない。

「のみもん…」

「れーそーこに…入ってン…にきまっへんらろぉ…」

「……」

「かってに…のへぉ…」

ニッキーは不機嫌そうにそこまで言うと、
のそりとむこうを向いて再び寝息をたて始める。
蔵ノ助はしばらく黙ったまま上体を起こして半目でぼんやりし、
目頭を揉み、
首を左右に折ってポキポキと音を鳴らすと、
煙草に火を点けてようやく立ち上がった。
全裸で冷蔵庫にむかう。

(マックスコーヒー…ねぇよなぁ…)

冷蔵庫を開く。
ひんやりとした冷気が下腹部に流れ落ちて大事な所を撫でる。
蔵ノ助は下着を穿いてこなかった事を少し後悔した。

(お…)

冷蔵庫を見渡すと、視界の左端にヤ○ルトが鎮座していた。
賞味期限も切れていない様なので迷わず手に取る。

(ヤ○ルトかぁ、最後に飲んだのいつだったか…ん?)

ヤ○ルトは蓋のアルミが半開きだった。
しかし『寝起きで回らない脳に糖分を送るのが先』と判断した彼は蓋を剥がしきると容器を口元で傾ける。


舌先にひんやりとよく冷えた液体が触れるのと、トイレに起きてきたニッキーが絶叫するのはほぼ同時の事だった。

「ッあああああそのヤ○ルト飲むなアアアァァァァァ――――――ッ!」

「んっ?ぐぅっ!?…ぷッ、うぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛」


ビックリしてゴクリと一口に飲み込んでしまう。
ヤクルトは腐っていたのかドロッとしていて、まるでザーメンの様に生臭かった。
てゆーか、ザーメンだった。



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