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君に届け!
ハロー恋人/落乱 綾部

綾部夢
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なぜ私はこんな所にいるのだろうか。

篠祇がいる場所。
それは落とし穴改め、1人用の塹壕…いわゆるタコ壷の中だった。


なぜ最上級生の自分がこんな落とし穴にはまったのか…
そもそも、こんな所に落とし穴を掘ったヤツはどこの誰だ…!

1人しか思いつかないけど。


「おやまぁ」

「やっぱりお前か綾部…」

ひょっこりと姿を表したのは、この穴を掘った張本人…
四年生の綾部喜八郎だった。
綾部は目をまん丸にして、自分を見下ろしている。

「珍しいですね。篠祇先輩が落ちるなんて」

いつもは保健委員長であり、不運体質でもある六年の先輩がかかるのだが…

「油断してたんだよ…」

思わず舌打ちをしてしまう。

「初体験、おめでとうございます」

「嬉しくない…」

しかし篠祇は、穴からでてくる気はないようだった。

「怪我でもしてるんですか?」


「…実戦練習でちょっとな」

通りで、登ってこないわけだ。
綾部はしばらく、篠祇を見つめながら思案した…





────

「なあ、綾部」

「なんですか?」

「…なんでお前まで落ちてくるわけ?」

暫く篠祇を見ていた綾部は何を思ったのか、穴の中に落ちてきたのだ。
ご丁寧に、私の上に。

「先輩が登れないからです」

どう考えたらそんな行動に行き着くんだ…
篠祇は呆れた。
そんな篠祇を知ってか知らずか、綾部はポツリと呟いた。

「落ちてみたら、先輩の見ているものが、見れるかと思いまして」

でもやっぱり見えないですね。

綾部は少しだけ残念そうに囁く。
その愁いを帯びた瞳が綺麗で、見ていられなくて、篠祇は思わず上擦った声を上げた。

「べ、別に、見たって面白くはないだろ!」

「でも…私には先輩のものというだけで、充分価値があるんです。」

さらりと言われ、篠祇は固まる。
綾部はそんな篠祇を見つめた。



「どうしたら、先輩は私のものになりますか?」


ハロー!恋心
落ちたのは、体だけじゃない





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