君に届け!
ジェイソンは消えた/庭球 幸村
幸村夢
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負けた。終わったのだ。
「篠祇」
「終わったな、幸村」
言葉など、いらなかった。
ただ泣けよと、篠祇が肩を貸す。
初めて会ったあの頃から変わらない、篠祇の態度。何も言わないこいつに、全てをぶつけてた。
あれから何度、季節を見送ったのだろう。
あの頃は、疑うこともなかった、必死に駆け抜けた日々。
目を閉じれば浮かんでくる、楽しかった日々と、笑いあう声。
焼けるような日差しの中、ただ勝利だけを追い求めていた。
居心地のいいこの場所で、俺たちは勝利を得たかったのだと。
勝たなければならなかったのだ。
「負けたんだな…俺たちは」
「ああ」
「終わったんだな」
「…ああ」
相変わらず、口がうまくない。
それに、思わず苦笑した。
こんな時くらい、慰めろよ、と、言ってやりたかった。
でもこいつはそうしない。
何度も感じた劣等感。
テニスができないもどかしさ。
こいつは、全部知っていた。
それでも何も言わなかった。
俺が求めるのが慰めなどではなく、ただ勝利の二文字だったことを、知っていた。
弱くなりたいときに限って、隣にいた。
だから自分を保っていられた。
「終わったんだ。ようやく。負けたんだ」
だから、もういい。
下手な慰めの言葉など、いらなかった。
必要なかった。
「…ああ」
青学の歓声が聞こえる。
赤也たちが駆け寄ってくるのが見える。
ジェイソンは消えた
空はどこまでも蒼く
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