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君に届け!
愛してるよ。/庭球 不二

不二夢
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愛に定義はあると思うかい?

突然の不二の問いに、篠祇は少し驚き、僅かに考えて口を開く。

「愛に定義を当てはめるのは個人の自由だ。もし"愛とはこういうものだ"、"こうあるべきだ"という定義があるとしたら、それは人間の勝手なエゴに他ならないさ。
人間が人間であるがゆえの傲慢さだよ」

篠祇の答えに、不二はおかしそうに笑った。

「なるほどね。僕ら人間は曖昧が大嫌いだから、定義だとか意味だとかを求めるんだろうね」

人の気持ちなんて、この世で最も曖昧で複雑なものだ。
いちいち浮かんでくるその気持ちに名前を付けようなんて、キリがないだろう。

だからこそ、人間は定義を当てはめて決めつけて、そうして定義や意味は気持ちを洗脳する。

「大げさに言ってみると、『愛』を『憎しみ』と言ってしまえば、今僕が君に抱くこの気持ちは『憎しみ』になるのかな?」

そう言って、不二は篠祇を抱き締める腕に力を込める。
篠祇は少しだけ苦しそうに身じろぎをしたが、されるがままに、不二の腕に収まった。

「憎しみは愛より強い執着心を生むんだ。それに、その『憎しみ』自体がある種の定義に他ならない」

篠祇の言葉に不二は目を丸くして、微笑んだ。

「じゃあ、君はこの気持ちをなんて呼ぶんだい?」

曖昧なままじゃ、やっぱり分からないだろう。

「僕らは曖昧が大嫌いな、愚かな人間だからね。言葉にしなければ分からないだろう?」

「それもそうだね」

篠祇はひどく納得したように頷く。
どう足掻いたところで、所詮自分たちには定義や意味が必要なのだから。

ああ、それではやっぱり



愛してるよ。嘘だけど
だって気持ちはそれ以上だもの





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