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君に届け!
巧妙に隠された気持ち 鋼錬 ロイ夢



例えばな話。

好きになった奴がたまたま男で、

いつかは大総統の椅子を狙ってて、

無類の女好きだったら。




「じゃあさっさと書類片付けてくださいね、た・い・さ」

「まったく…君は本当に厭味な奴だな、ササギ」

バサバサと持っていた書類を散らかったデスクに置いて、ササギは目を据わらせた。
そんなササギに、ロイ・マスタングは大袈裟にため息をついた。

「そもそも大佐の仕事が遅いのが悪いんですよ。女の子とイチャイチャしまくりやがって羨ましい」

「悪いね、モテて」

…………本気で殺意が湧いた。

「大佐。俺どうしても殺りたい奴がいるんですよ目の前に」

「ほう、物騒だね」

「最近はストレスが溜まるし、胃に穴が空きそうになるし」

「君がそんなに神経が細いとは初めて知ったよ。驚き桃の木」

「………これって、原因を取り除くしか解決しないですよね?」

ササギはガチャリ、と懐から拳銃を取り出してニッコリ微笑む。

「ふっ。この私に勝てると思っているのかね」

不敵に笑った大佐は立ち上がると、錬成陣の書かれた手袋をはめた。


…………。


「その書類終わるまで帰っちゃダメですよってホークアイ中尉が言ってました」

「私はこの後デートなんだが!」


指令室を出る時にそう言ってやれば、大佐は慌てたように叫んだ。
もちろん、ササギは何も聞かなかったが。






「…………さいっあくだ」

ササギは頭を抱えて、指令室の前でしゃがみ込んだ。
別に大佐に言ったわけじゃあないし、さっき会った彼の部下に言ってるわけでもない。

「なんで自覚しちゃったかなぁもう」

そう、自分に対して言ったのだ。

ササギは自分で言うのもなんだが、優秀だ。
まだ22歳だというのに、国家錬金術師の資格なしに少佐まで上り詰め、出世街道まっしぐら。
さらに人好きのする明るい性格は、大抵の人から可愛がられていた。

だと、いうのに。


「好きになった奴が、男とか…」


そう。
ササギが頭を悩ませているのは、自分の上官であり、無類の女好きな色男、ロイ・マスタングなのだ。

何故好きになったかとか、いつ自覚したとか、その辺は割愛しよう。

「無謀すぎるよな。自覚したとたんに失恋だし」

自分だって、恋愛するなら女の子がよかった。


「あーあ、報われねぇ」


そうだ。今日は仕事が終わったら中尉とお茶に行こう。
大佐の監視はハボックにやらせよう。
報酬は、タバコでいいか。

ササギは立ち上がると、中尉をお茶に誘うために歩きだした。






巧妙に隠された気持ち



伝えるつもりは、ない。






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