君に届け!
ビスクドールの亀裂/灰男ラビ夢
ラビ夢
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その瞳が、嫌いだった。
「お、ササギじゃん」
赤い髪を揺らして、そいつはやってきた。
「ああ、ラビじゃないか」
ラビはこちらに駆けてきた。
「久しぶりだな。面倒な任務だったのか?」
「まあな。やっと帰ってこれたさ」
エクソシストとして世界を回っていれば、こうして話すことも少なくなってくる。
特に、次期ブックマンであるコイツは。
…こいつの瞳が、嫌いだ。
記録者の瞳。人を上から見下ろして、常に観察している。
人形と話しているようだ、と思った。
絶対に人に本心を見せようとしない、瞳。
だから俺も、こんなやつに本心なんて見せてやらない。
だって、悔しいじゃないか。
「ササギ!報告書手伝ってくんない?」
「自分でやれよ。おじいに叱られんぞ」
こういう軽口を叩いていれば、誰も自分がラビを嫌っているなんて気づかない。
『ササギとラビは、とても仲がいいのね!』
以前リナリーに言われたこと。
吐き気がする。
同時に、安堵した。
そう。自分はラビが嫌いなのだと、肯定された気がしたのだ。
「でも俺、そういうササギ好きさ」
「…キモいぞ」
ササギ酷いー!
叫ぶラビは放置した。
冗談じゃない…
「俺は、嫌いだよ」
だって、いつかお前は消えてしまうんだから。
ビスクドールの亀裂
知らなければ、幸せだったのに
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