君と僕の間にある一枚の薄いプライド。
好きだ。
この一言が言えたら、どんなに楽だっただろう。何度も何度も心の中で呟いて、自分を苦しめる。
「綱吉」
「何ですか?恭弥さん」
「………何でもないよ」
「そうですか?変な人ですね」
そう言ってふふっと微笑む君の唇に、何度口づけたいと願い請うただろう。
「あっ今日は、久々にみんな揃ってるんで、一緒にご飯食べましょうか」
「…うん。そうだね」
窓から射し込む光に、色素の薄い髪をキラキラと輝かせながら、やっぱ和食ですかね?なんて聞いてくる綱吉を、思わず抱き締めたくなる。
「…綱吉」
君は、僕の気持ちを知ったらどんな反応をする?困った顔して、ごめんなさいって言うかな?それとも、気持ち悪がるかな…。もしかして、俺も好きですって受け止めてくれる?ねぇ綱吉…君は
「恭弥さん?」
「えっ、あ、何」
「何じゃないですよ。人の名前呟いてボーッとしちゃって!」
「あー、ごめんね」
「いや、大丈夫ですけど。疲れてますか?」
「…かな」
「じゃあ、無理しないで休んで下さい。今日のディナーは来れますか?」
「うん、大丈夫だよ」
綱吉に背を向け歩き出しながら思う。やはり、無謀な賭けはよそう。もしダメだったら…?そんなの、僕はどうすればいいの。僕はこんなにも、臆病だ。
「あ、恭弥さん」
不意に呼び止められた
「…なんだい」
「遅くなったけど、おかえりなさい」
任務お疲れ様です。と言いながら、ふわりと微笑む。
その笑顔に僕の心臓は、ドキンと跳ね上がる。
「………うん」
この一言を絞り出すので、精一杯だった。
嗚呼…誰か。僕のこの薄いプライドを…壊して。
今すぐ君を、抱き締めさせて
こんな臆病な僕を赦して。
君を……愛してる
20080113 藍 企画参加作品
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