隠しとおす心◆
いつからか
何時からか政宗に抱いているのは、恋心だと気付いた
気付いて、だけど、どうするわけでもないと思って
膝で眠る政宗の髪を梳いた
「ユキ」
「片倉様。政宗、起こしますか?」
「いや、いい」
それきり小十郎が喋る事もなく、ユキもこれと言って話題もなかったので政宗に視線を戻した
瞬間、強く吹いた風で顔にかかった政宗の髪を払ってやる
初めて出会ったあの時を、ユキはぼんやりとしか覚えていなかった
ユキとしてはその後、城の庭で木刀を振るっていた政宗の方が鮮明で今でもはっきりと思い出せる
政宗がその胸に抱いてくれた感触を覚えている
全てを失った私に全てを与えてくれた
「Hey.ユキ」
ふと政宗が瞳を開けた
ユキを見上げて訝しげな顔をする
「なんで笑ってんだよ?」
「‥‥‥、政宗の寝顔が可愛いかったんだよ」
誤魔化すように悪戯っぽく言ってやれば、政宗の手がユキの胸ぐらを掴んだ
あっという間に引き倒されて、したたかに背中を打つ
「っ、政、宗」
「so cute?言うじゃねえかユキ。お仕置きが必要、っ!!」
─ダンッ
ユキの足が政宗の首に掛かり、半分馬乗りになっていた政宗の体が仰向けに床に縫い付けられた
ニヤリとユキは笑うと政宗に顔を近付けて言った
「so cute.とっても可愛いかった」
「馬鹿野郎、男に可愛いなんざ言うもんじゃねぇんだよ」
首にユキの足が掛かったまま政宗は言い返すが、苦しげに息を詰まらせる
いつまでも足を外さないユキに、見かねた小十郎が止めに入った
「やめねえかユキ、政宗様もお戯れはおやめ下さい」
「小十郎、居たのか」
ユキが足を外して政宗が起き上がる
小十郎は小難しい顔をしていて、政宗は思わず自分の今日の行動を思い返した
が、今日は抜け出してさえいない
「Huh.何だよ小十郎。今日は政務も全部終わらせた筈だぜ?」
「左様ですな」
ならば何が問題なのか
だが小十郎は何も言わずに部屋から下がっていった
本当にもう遅いのか?
小十郎はいつかの自分の考えを再考する
近づかせ過ぎた
だがまだ間に合うのかも知れない
ユキがまだ政宗を望まない内ならば
生きることを、望まない内ならば
2011.6.30.
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