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ここはsanctuary◇



私が拾われたのは、十五の時だった

親兄弟を失ったのも、十五の時だった

髪が白くなったのも、十五の時だった


そして私は今、奥州の南に位置する岩出山城に居る

私を拾った伊達の跡取りの元で暮らしているのだ


どういう訳か拾われて以来、私はその伊達の跡取りの側近扱いを受けていた

そして新しい名を貰った



「ユキ、政宗様はどちらにいらっしゃる?」

「え、さっき、片倉様に用事があると‥‥」



そこで二人は顔を見合わせる

やられた



「っ、すぐに探しに‥‥」

「ああ、頼む」



斯くてユキは政宗を探しに出たのだが、心当たりは幾つかあった

裏庭には居なかったから町の行きつけの茶屋か、裏手の山で昼寝でもしているか


今日は天気がいいから昼寝だろう、しかも茶屋で団子を買って



「まったく」



馬に騎乗するとすぐに走らせた

ああ、今日は本当に風が気持ちいいな

こんな日は部屋の中に居るのは勿体無い


そう思いながらいつもの場所に行けば、案の定、政宗が木陰で昼寝をしていた

だが馬の蹄の音で気づいていたのだろう

ユキが近付けば目を開けた



「よぉ、遅かったなユキ」

「片倉様が探していたぞ、政宗」


「Ha!こんな日に部屋に籠もっていられるかよ」



ユキは一つ溜息を吐くと政宗の横に腰を下ろした

本当にまったく、期待を裏切らない人だ



「ユキ、膝を貸せ」

「はいはい、どうぞお使い下さい」



その言いぐさに政宗はHan!と呆れるが、膝はちゃっかりと借りていた

政宗が目を閉じて、ユキも木に背を預けて目を閉じた


この穏やかな時はいつまで続くのだろうか?

戦は嫌いだ


けれど、政宗が参戦する時はユキも参戦していた

あの日の誓いだ

私が守ると誓った、全てから守るのだと



「‥‥‥ユキ、don't go everywhere...」

「政宗、その南蛮語は分からないよ」


「何処にも行くなって言ったんだよ」



何処にも?

一瞬意味を計りかねたが、ユキはやがて微笑むと政宗の頭を撫でた



「それはどうかな?政宗がきちんと政務をこなさなければ、私どころか片倉様も愛想を尽かすかも知れないぞ」

「Huh.」



瞳を開けた政宗がユキの笑みの意味を汲み取って笑う

そいつは不味いな

そう呟きはするが、一向に動こうとはしない


まだ陽は高いのだ

もう一眠りしてから戻っても問題はないだろう



「もう少ししたら起こすからな」

「‥‥‥Ah.」



眠った政宗を確認して、ユキは眼下を見下ろした

政宗、この地を豊かにしてくれよ

もう私のような子供が生まれないように、どうか


その為ならば私は、お前の刃となろう




2010.5.22.

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あきゅろす。
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