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鬼も人に戻ろう◇



義姫が城を出る前、ユキは部屋に呼ばれていた

本当は行く気はなかった

だがどうしても、無視することが出来なかった

どうやら私は政宗に関わる事は全て抱えていたいらしい


自嘲気味に笑って、ユキは義姫に声をかけた



「義姫様、ユキに御座います」

「お入りなさい」



罠、かも知れない

今更そう思って、だがもう遅い



「失礼致します」

「‥‥‥」



部屋には義姫ひとりだった

無言で向き合う中、途中、女中がお茶を置いて行った



「そなたは、何故政宗の側に居る?」

「私が政宗と共に生きたいからです」



迷いもなく即答すれば、義姫はくってかかるように身を乗り出した



「政宗はそなたを鬼だと言うたぞ?それでも共に生きると申すか」



その言葉にユキは笑ってしまった

この方は政宗の言葉を正しく受け取る事ができないのだ

もしかしたら一生、政宗の想いを知る事はないのだ

可哀相



「それの何が悪い?政宗は知っている。鬼が人に戻る時も来ると」



政宗が天下を統一する

そうすれば、私も


鬼も人に戻る時が来る



今はまだ許せなくても

今は何もいだけなくても



政宗は信じてくれているのだ

待っていてくれているのだ

私を



保春院と名を変えた義姫様を、その余生を過ごすという寺へ送る役目を自ら申し出た

別れ際に一言だけ告げる



「お心健やかにお暮らし下さいませ」



保春院は最後までユキを輝宗殺しとは責めなかった

あの時政宗と共に弓引いたというのに

最後まで、政宗を責めて居たかったのだろうか

ユキには分からない




2011.3.8.

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あきゅろす。
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