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Don't worry.I'm fine.◇


義姫様は城を出た

輝宗様を失い、政宗に呪いの言葉を突き刺して


義姫様は二度と帰らない

政宗の元に






ぺたりと、ユキが隣に座った

深夜、何も言わずに城を出できたと言うのに


ただ

来る気はしていた



「Don't worry.俺は大丈夫だ」

「‥‥そうか」



呟かれた言葉にそれだけ答えて、ユキは政宗と同じに城下を見下ろした

ほとんど灯りは消えていて、だが確かに人々の息遣いが聞こえて来る



「この輝きを」



沈黙を破り、政宗が口を開く

少し前に家督を継いでいた政宗だったが、輝宗の元へはほぼ毎日話しをしに足を運んでいた

失われたものは余りにも大きい



「守れと、親父は言ってたのか?」

「家を継ぐとはそういう事でもあるだろう」



それだけではなく、もっと色々なものがある

きっと、輝宗様が居なくなり、それが明確になった

政宗はきっと不安だ

これからは本当に、伊達家の全てが政宗の肩に掛かっている



「Ha.情けねえ。親父が居なくなった途端、こんなに‥‥」

「政宗」



ユキは政宗の正面に回った

跪き、瞳を見据え、そして笑う



「何の為に片倉様が居る?何の為に私が居る?何の為に皆が居る?」

「ユキ」


「お前と共に歩む為だ。お前と共に生きる為だ」

「‥‥‥そうだな」



力なく政宗が笑う

ユキはただその手で政宗の頬を包み込む



「ユキ、」

「政宗、泣け。胸を貸してやる」



ユキはその胸に政宗を引き寄せた


ああ、くそ

あの時とは逆じゃねえか


出会ってすぐの頃を思い出した

あの時はユキが家族を亡くした

抱きしめるユキを抱き返しながら、政宗は込み上げるものに渋面をつくる


これから奥州を、天下を穫ろうって奴が笑わせる



「ユキ、‥‥‥ユキ‥」

「‥‥政宗」



すまない

ごめん

もっと私が、輝宗様を気にしていれば良かった

そうしたら、政宗が何を失うこともなかったのに




私たちは抱き合って泣いた

それ意外に、悲しみをやり過ごす方法を知らなかったから




2011.3.7.

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