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死して尚捕らわるる◇



裏切り者め!

卑怯者め!


輝宗様を質に取り、伊達家を、政宗を脅すとは何事か!

ああ、なのに何故

政宗は何も悪くないのに、何故



「伊達の行く先、そなたに任せたぞ!政宗!!」



響く輝宗の声に政宗の背が震えた気がした

嫌だと言え

やめろ



「ユキ」



びくりと震えたのは自分だった

名を呼んだ声は低く、低すぎて、これは怒りではなく悲しみだ

駄目だ

そんなこと決めるな



「弓を寄越せ」

「嫌だ」



ユキの応えに振り返った政宗は再度要求した



「寄越せ」

「嫌」



言ったユキは弓を構える

政宗の背に

その先の輝宗の胸に



「ユキっ!」

「嫌だっ!」



ギシリと政宗の手が矢をつがえたユキの手を握り締める

いまや戦場となったこの道程に、得も言われぬ緊張感が走った



「Please.俺がやらなきゃなんねえ」

「駄目だ」



ポロリとユキの瞳から涙が流れた

政宗政宗、政宗

お前が父親を殺すことなんてない



「私がやる。私はお前の刃だ」

「‥‥ユキ」


「私はお前にそんな事は絶対させない」



政宗が苦笑した

ユキの背後に回り、共に矢をつがえる

真っ直ぐに前を見た



「‥‥お前が俺の刃なら、俺に逆らうんじゃねえよ」



無情だ

全てが灰色に染まる


─キュンッ


矢は輝宗の胸を射抜き、伊達軍が手を出せない理由が消えた

一種の弔い合戦となり勝敗は一瞬にして決まる

政宗の心の内などはお構いなしに、後処理は為されて帰城した



あの時

崩れ落ちていく輝宗様を見つめていた

笑っておられた

それは政宗を、信じていたからですよね?

輝宗様は、政宗様がこの後の伊達家を立派に率いていくのだと

政宗様はこれしきの事で終わりはしないと





私も、


私も信じている




2011.2.16.

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