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予感◆



なぜ側に置くのかと聞かれれば返答に困るだろう

ユキを拾った理由さえも定かではない自分が居た



「政宗」



気負いも敬称も無く、ユキが名を呼ぶ

その声が好きだ


悲哀も同情もない指先で触れるが、ならばそれは慈しみなのだろうか?

眼前で揺れる双眸に問おうとするが言葉にならずに見つめ合う羽目になった



「政宗?」



持参した酒瓶を置いたユキが政宗の前に座って首を傾げた

酒なんて、飲めねーくせに



「お前、懲りねえな」

「政宗と片倉様と前田慶次なら面倒見てくれるから大丈夫なんだ」



小十郎と前田慶次?

あいつらとも飲んでやがんのか



「やめろ」

「ん?何が」



あいつらと飲むのを

そう直接言うのも憚られ、政宗はユキが飲もうとしていた酒を奪い取った



「あ、狡い!」

「お前は飲むとkiss魔になるんだよ。自重しろ」

「いーだろkissくらい!減るもんじゃなし!」



減るもんじゃなし?



「言うじゃねえか」

「う、何だよ!怒ってるのか?いいじゃないか、別に大丈夫だろ?酒蔵作るくらい酒はあるんだし」



論点が違う

そう言いたい政宗だったが、毒気を抜かれた気がしてそれ以上いうのは止めた



「酒を飲むなら俺だけにしろ」

「?なんで?」


「それは、‥‥俺が飲むのは一番いい酒だからな。お前、酒にはうるさいだろ」

「そうだな。うん。政宗と飲もう」



なぜ側に置くのかと聞かれれば、返答には困るだろう

だが拾った理由ならば、答えられる気がする



予感がしたのだ

そうだ、ただの勘だ



ユキは俺の、月かも知れない




2010.11.12.

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あきゅろす。
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