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7:ものすごく困った







悪夢だわ

どうしてこんなパーティーに居るのかしら


父親にエスコートされて(エスコートなんてできたんだ!)だだっ広い会場を歩き回る

これでダンスなんぞしろと言われたら裸足で逃げ出すからな!私は



心の中で悪態をついて、顔には笑顔を貼り付ける

会う人はみんな、自分の娘がいかに素晴らしいか自慢気に話して、娘も同様に自分の美しさをひけらかした

正直うんざりした


ただ父親がその人達とは違うことにコユキは安心したのだった




「ザンザス様」

「ザンザス様だ」



急にザワザワとし始めた場内に紛れ込んだ"ザンザス"という名にびくりとする

しまった、もっと早く抜け出す筈だったのに!

慌てて父親に耳打ち



「パパ、トイレに行ってくるから」

「え?ザンザスくん今来たのに」


「我慢できない、行ってくるね」



ザンザスくんだなんて、パパったら意外と大物だわ

くすくす笑いながら急いで廊下に出ると、その辺のメイドを捕まえる

トイレに案内させる振りをして、気絶させて服を取り替えた

あとは用事を言いつかったとでも言って抜け出せばいい


町までどれくらいあったかは覚えてないけど何とかなる

って、え



―ドッ ガシッ



ドアを開けたら目の前に人

思わず出た手を掴まれて、びっくりして顔を上げる

目の前に居た人物にコユキは固まった



「ザ、ザンザス」

「よぉ、そんな格好でどこに行く?」



ピシッと音がするのではないかと思うほど固まったコユキは何も考えられなくなった

殴り倒せる気がまったくしない

もともとこいつから逃げる気だったのに、手を掴まれて逃げられないこの状況



「見合い」

「え?」


「しに来たんだろ?」



ニヤリと笑ったザンザスに青くなって、そのまま手を引かれて会場に連れていかれれば更に焦りが募る


うああああ!

や、やめてやめてやめて、やめろー!!


いきなりメイド服着た女を連れて戻ったザンザスにみんながみんな不思議な顔をしている



「どうした?ザンザス」

「こいつに決めた」



何を?

さっきのお爺さん(やっぱりボンゴレ九代目だ)の前に突き出されて、コユキは思いっきりうろたえた

駄目だ、絶対、こいつの前だと調子が狂う

この間だって、連れが居るのにこいつと喧嘩始めちゃったし、いいことない!



「おや?君はコユキちゃん?メイド服も似合うね」

「‥‥文句はねぇな」



いやいやいやいや、あるに決まってんだろ!

ぎゅっと握られた手が変に汗をかく

うわわ、男にこんな風に手握られたことないよ



「文句、あんのか」

「う、ある」



目つきが悪すぎて尻込みしてしまうが、思わず口をついて出た言葉に嘘はない

だけど握られた手は解けないまま、顔は真っ赤に違いない



「説得力はねーな」

「うるさ」



くいと上げられた顎に言葉が喉に詰まる

次に覆い被さった影に抵抗の二文字は瞬間的には浮かばなくてコユキは困った


ものすごく困った




2009.5.6.



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