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6:信じたくなーい






「良かったわ〜、コユキを迎えに行こうと思ってこっちに来てたのよ」

「うんうん、お土産買うためにこのお店に寄って良かったね」



和気あいあいと目の前で話し込む二人には頭痛がする

コユキはもう逃げられないなぁと、頭の隅で考えていた


あまりにも電話してくるので着信拒否にしていたのだが、会いに来られたらしょうがない

腹を括るか、とコユキがため息を吐くと同時に両脇を抱え込まれた



「え?は?なに?」

「まーまー、ちょっと付き合ってよコユキ」



訳が分からないままでかい車に詰め込まれる(リムジン?)

両親は相変わらずニコニコと笑っていて、何故かパパは助手席に乗っていた



「なにこれ?何処いくの?」
「行ってからのお楽しみ☆さ、これに着替えて」



箱から出てきたのは真っ青なドレス

嫌な予感がする

ママはドレスを押し付けると自分も着替え始める



「ちなみにこれを着ないと何か支障が?」

「ママ、コユキがそれ着ないと泣いちゃうわ」



最高の脅し文句でした

しばらく見てなかったから効果は抜群、可愛らしい動作とは逆に目が笑っていない



「着ます」



最後に見たのは中学の頃だったか

コユキは母親のこれと父親の涙には逆らえないのだった





「さ、着いたよ。着替えは終わった?」

「ええ。あとはお部屋を借りてコユキのお化粧するわ」



車から降りるとそこは、お城みたいな屋敷がそびえ立っていたのだった

周りには同じような車から、同じように着飾った人達が沢山居る

嫌な予感は確信に変わる

しかし茫然としているうちに中に引っ張られ、あれよあれよという間に化粧をほどこされていく



「少し目を閉じて、コユキ」

「え、うん」



逃げられない

それも確信に変わったところでコユキは一つ妙案を思いつく

二人が今は側に居るが、少し経って逃げないと思わせればチャンスはある筈


そうと決まればやることも決まった

どうやら何かのパーティーらしいが、さっさとおさらばしてやる!



「コユキ?そろそろ行くわよ」

「今いく」



長い廊下を三人で歩いていくと、お爺さんが一人立っていた



「やぁ、よく来てくれたね。そちらがお嬢さんかね?」

「はい。コユキと言います」



よく分からないが、母親に倣って一礼した

だけど視線は外されることなくコユキに注がれる


不思議な人


何処にでも居そうなお爺さんなのに、為政者のような貫禄がある

視線をそらせずに居るとにこりと微笑まれた



「ようこそコユキさん。今日はザンザスも来ているから、話しをしてあげて下さい」



時間は止まった

微笑みを返した顔も固まる



ザンザス?



あ、あれ?

それはつまり(そういえばザンザスはボンゴレの暗殺部隊のボスで、ボンゴレってパパ達が見合い相手にって言ってたところで、目の前のお爺さんの口振りだともしかしてこの人がザンザスのお父さんで、自分が招待したみたいな口振りだからボンゴレのボス?)、つまり、ザンザスが見合い相手で、今日がその日だってこと?


考えをまとめ終わった頭は警報を発した




逃げろ!




2009.5.5.



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