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5:猿かテメーは!






あー、はー‥‥

これは相当ザンザスとやらは要注意人物だったらしい

教室の隅でひとり、コユキは頬杖をつく


昨日のあの騒ぎを知ったクラスメイト達は、一切コユキに話しかけようとはしなかった

ミランダも今日は休みだ


これも自業自得だろうか?

余計なことを言って、やって、‥‥‥そう言えばあいつに"心がない"なんて言っちゃったな

傷ついたかな?(でも殺されかけたし)



「悪いこと、したかな?(でも殺されかけたし)」



自然に独り言になって虚しいことこの上ない

教師すら目もくれないので、仕方なくイタリア語の勉強をする

だってイタリア語覚えないと授業わかんないし

そう言い聞かせて辞書に目を走らせていると、いきなり教室のドアが開いた



「う゛おぉい!コユキって奴ぁどいつだぁっ!?」

「ビクッ」



でっかい声!

続いて教室中の視線がコユキに向いて、脅えたように肩を竦めてしまった

テメーか、と瞳をギラつかせる男にコユキは嫌な予感がして取りあえずカバンをひっ掴んだ



「お前かぁ、ザンザスが呼ん」

―ガタ



ザンザスの名前が出た瞬間、コユキは窓から飛び降りていた

ちなみにコユキにとってみれば三階くらいなら問題ないし、ここは二階だ



「う゛おぉいっ!!?」

「人違いですっ」



慌てた銀髪男が窓から身を乗り出す頃にはコユキは門へと走っていた

ここまでは追いかけて来ないだろう

だがそんなコユキの予想を裏切り、男は窓から飛び降りてきた



「待てぇっ!テメー、何も聞いてねぇのかぁっ!!?」



何を?何を?何を?

誰から?


そんな疑問が頭を駆け抜け、だが足を止める気は一切ない

止まったら面倒なことになる!

絶対に!



「だから人違いですって!!」

「ふざけんなぁっ!コユキ・ミルシャン、これはテメーだろぉっ!!?」


え?は?

なんだかヒラヒラしたものを掲げた男

それが写真だとわかり、コユキの頭は更に疑問符で埋め尽くされる

なぜ男が自分の写真を持っているのか全くわからない



「いい加減止まれぇ!」

「嫌っ」



否定の言葉を吐き出して、コユキは閉まっていた門をヒラリと飛び越えた

猿かテメーは!と後ろから聞こえる声は無視

コユキはそのまま街に消えた




「ちくしょう、やられたぜぇ」



門の格子を掴みながら、スペルビ・スクアーロは嘆息した

まさか逃げられるとは思わなかった

ここまでザンザスの名前に反応するとは、いったい昨日なにがあったのか知りたいところだ



「おい、カス」

「う゛お」



横付けされた車の中からザンザス



「あの女はどうした?」

「ああ、それが猿みてーな奴で逃げられたぜぇ」


―バキャッ



ザンザスの投げつけたグラスがヒットしたスクアーロは思わず卒倒した

しかも車はそのまま走り去っていく



「う゛ぉおいっ!テメー、置いていくなぁっ!!」






********





あー、ひどい目にあった

これ以上あいつに関わってたまるか!



まだよく知らない街の中を歩きながら、コユキは美味しそうなパンの店を見つけていた

逃げ切ったことに安心して思わず中に入ると、思もしなかった人物達と遭遇する



「げ、パパ、ママ」

「コユキーっ!会いたかったよー!!」

「どうして携帯着拒なのー!!?」



周りの迷惑も考えない二人を前に、コユキは目眩を覚えてよろめいた




2009.5.1



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