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3:平和ボケした日本人の戯れ言








運命には抗えないと、別に誰に言われたわけじゃない

それに運命の意味なんて知らないし(成る可くして成るということ?)、偶然だろうが必然だろうが知ったことじゃない

結局は起きたものは事実として受け入れるべきなのだ

というか、最終的にはそれしかないのだ


だけども私が今こういうことを考えてるのは、運命を受け入れるべきかを迷っているからで

知りたくなかった事実が目の前に複数鎮座している



「あー、誰か時間を巻き戻してくれ」



コユキはそう呟くと頭を抱えた

危険だと言われていた男に不可抗力とはいえ、関わってしまった


その男に腕を捻り上げられながら、コユキは死にたい気持ち全開だった

思えばイタリアに来てから運がない

いや、あの2人を両親に持った時点で幸運とは無縁だったのかも知れない



「そうだ、絶対」

「‥‥ふざけてんのか」



質問にすら答える気のないコユキに、男、もといザンザスがキレかけた

この時点でかっ消すと言われなかっただけ幸運であるとコユキは知らない



「ふざけてません。すみません。ごめんなさい。だけどあの子に謝って下さい」



あ、言っちゃった☆

えへ☆


死んだかな?

でもだって、思ったことは言っておかないと

たかがぶつかったくらいで殴るなんてどんだけ短気なんだ



「!、うっ」


―ドサッ



ミランダの方へ投げ出され、コユキは尻餅をついた

青ざめたミランダは震えていた


ごめんなさい、ミラ

私がちゃんとザンザスの顔を知ってればこんな事にはならなかった筈なのに



「消えろ」



冷たく言い放つザンザスの瞳をコユキは深く覗き込んだ


ああこの人、人に優劣があるなんて信じてるのかしら?

見下げた瞳、軽蔑も卑下も存在しない

ただ自分よりも劣る者を見る目




「弱い奴はやられて当然だとでも思ってるの?それってかなりムカつくわ」



あ、今度こそ死んだ?


でも余計な事を口にしてしまうのは親譲りだから、やっぱりあの2人を親に持った事が私の不幸の始まりなんだわ

目の前まで歩み寄られてゴクリと唾を飲み込んだ

恐い、その射抜く瞳が


あ、暗殺部隊のボスなんだっけ

殺されるはずないなんて所詮は平和ボケした日本人の戯れ言だろうか



「‥‥‥‥‥」

「う?」



何だか長くこの雰囲気(殺気?)の中に居たせいか、なれてしまった

こちらに伸ばされた腕に反射的に手で頭を庇おうとしたらその手を掴まれた



「な、に?」

「‥‥‥‥テメーはどうなんだ?」



なに?

弱いかどうかってこと?


とんでもなく緊迫した空気の中で、コユキはそれに対する答えを探していた




2009.4.5



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