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2:近づいてはいけません








これは考えを改めなければ


一日学校で過ごしてみて、コユキはクラスメートの女の子達のフレンドリーさに感謝していた

自分の拙いイタリア語にもキチンと向き合ってくれて、お陰でコユキは昨日部屋で感じた心許なさを緩和できていた

そしてこの学校のことを教えてもらった


つまりはこの学校はマフィアのご子息、ご令嬢が通う学校らしいのだ

運営もマフィアの寄付によって成り立っており、だからこの広さ、この建築物!



「で?コユキはなんでこの学校に来たの?マフィアの娘って訳じゃないんでしょ?」

「うーん、親に放り込まれて‥‥」



それは事実で、まあいずれは此処も出て行くつもりだが、お金を貯めるまでは此処に居る

それを彼女らに言ってもしょうがないので言わなかった(私って冷たい?)


あとそれともう一つ、忠告も聞いた

この学校では近付いてはいけない人物が存在するらしい

何人か居るのだが、特にザンザスという人物には間違っても逆らわないほうがいいそうだ

というよりも関わるなとの仰せだった



「へぇ?相当デカい規模のマフィアってこと?」

「大きいだけじゃないの!暗殺部隊のボスなんだから!」



あ、暗殺ぅ?

物騒な言葉に引いてしまう


この時代に暗殺なんてものがまかり通るものか、そう考えもするが現に存在するというのなら考えを改めなくてはならない



「それに!いつもザンザスの近くに居るスペルビ・スクアーロ!」

「スペルビ?」



どうもイタリア人の名前に馴染めず、疑問符を付けてしまう



「そいつも要注意よ。なんたってあの"剣帝"を倒したんだから!」

「??剣帝?」



もう面倒臭い!と言われつつ、コユキは質問を続ける

だってイタリアンマフィアの事情なんて知るわけないし



「うーんと、とにかくその二人には近づかない方がいいんだね?」

「そ、でね?キャッバローネのボス候補でディーノさんて人が居るんだけど、その人は安全なの」


安全?
マフィアに安全なんてものがあるんだろうか?



「きゃ、キャベジン?」

「ナニソレ?キャッバローネよ!!ディーノさんは街の人に愛されてるのよ!前はヘタれでダメダメだったけど、家庭教師のおかげで何だか少ししっかりしたみたいだし」



よく知ってるなー

どうやら情報通であるミランダ(ブルネットでベリーショートな髪した、可愛い子なのだ)

校内を案内されながらのおしゃべりは止まることはない


しかし広い学校だ、というより城だ(前にも言ったが)

中庭を抜け、少し歩くともう一つの校舎が顔を出す

これもまた中が広そうで、思わず見上げてしまう



「きゃっ」


―ドサッ



ミランダの悲鳴に見上げていた視線を落とすと、先に進んでいたらしいミランダが尻餅をついていた

誰かにぶつかったんだ



「あは、ミランダなにやって」

「すいません!ごめんなさい!」



いきなりの謝罪に、コユキは思わず歩みを止める

ミランダはぶつかった相手にひたすら謝り続けていて、まるでお偉いさんにでもぶつかったみたいだ



「うるせぇ」

「!?」



―ドカ ドサッ



「ミランダ!」



殴られたミランダに駆け寄って抱き起こすと鼻血が手についた

‥‥ひどい、女の子にこんな風に手を上げるなんて


コユキはミランダを座らせると、彼女が止めるのも聞かず男に殴りかかった

コユキの拳は男の顔をかすめただけでそれから後は空を切る


かわされたっ



「何だテメーは?」

「っ、」



空を切った腕をそのまま掴まれる

ギリっと捻り上げられ言葉を失った


そのコユキを茫然と見ながら、ミランダは呟く



「だ、駄目よコユキ。ザンザスさん逆らったら、もうこの学校には」

「う、え?この人がザンザス?」



見上げればひどく目つきの悪い紅玉の瞳と目が合う


ザンザス、

この男が暗殺部隊のボス




2009.4.4



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