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10:友達からお願いします






教室に入ると、視線が集まった

伺うような愛想笑いと関わりたくないという空気

これはちょっと、味わったことがある(日本でやんちゃしてた時にね)



「おはよう」



無視は無くなったかと思ったが、返事はない

前と同じに教室の窓際の一番後ろに座る

ほら、ザンザスに関わってから良いことなんて一つもない


そのままお昼になってコユキは教室を出ることにした

さすがにこの空気の中で食事は無理だ


―バンッ


コユキがドアを開けようとする数瞬前、いきなり蹴り開けられたかと思ったらデジャヴ

スクアーロが大声で叫んだ



「コユキはいるかぁっ!?」

「う、うるさい!」



―ドカッ


スクアーロの鳩尾に前蹴りを喰らわせて教室の外に出す

初めて会った時から思っていたが、なんて声のデカい男なんだ

歩く騒音、いや、公害だ!



「てめぇ、今の、完璧入ったぞぉ」

「当たり前だ!入れたんだからな!」



何の用だと聞けば、XANXUSからの迎えだった

ちょうど良かった

授業中、コユキはずっと考えていた事をXANXUSに言ってやろうと思う



「テメー、XANXUSの女じゃなけりゃ殺ってるぞぉ」

「それはcoolじゃないよ」



肝の据わった女だぜぇ

スクアーロはそう思って、XANXUSがコユキを選んだ訳が少しだけ分かった気がした


そのコユキはXANXUSの居る部屋につくと、ギョッとした顔をした

多分その部屋にコックやらメイドやらが居たからだ



「おせぇ」

「この女に一発喰らわされたぜぇ」

「スクアーロの声がデカいのが悪い」



コユキを室内に促すと、スクアーロは部屋を出て扉を閉めた

ああ、スクアーロは一緒に食べないのか

そう思って、コユキはXANXUSをまっすぐ見据えた




「座れ」

「‥‥‥私、流されてた」



コユキの声が部屋に凛と響いた

XANXUSが睨みつけたのはコユキだけのはずなのに、使用人達が動けなくなっていた



「おかしいと思ったんだよね、私は男に簡単に付いてく女じゃない」

「‥‥何が言いたい?」



トントン

つま先で床を叩いて、腕を組む



「アンタの許嫁なんざまっぴらごめんだ」

「んだと‥‥‥?」



ピキッと音がしそうな程、目に見えてXANXUSの怒りが部屋に充満した

怯む?


いいや、怯まない



「形だけならいいさ。まだ学生だし、何年後かにはアンタが死んでるかも知れない。だから私は友達がいい」

「‥‥‥‥」



一瞬コユキが何を言ったか分からなかったXANXUSは眉間に皺を寄せた

云うに事欠いて、友達だと?



「ブハッ‥、ックックックッ、言うじゃねえか。この俺と友達だと?」

「‥‥笑いすぎだって」



まさか暗殺部隊のボスであるXANXUSに、友達になろうなどと言う奴が世の中に居るなど誰が予想できただろうか

面白い、誰が見ても面白いこの状況で、XANXUSが一番楽しそうに笑っていた


ならばなってやろうじゃないか

お友達とやらにな



「いいだろう、友達から、だな?」

「そう、友達から」



よろしく

そう言って差し出した手


返してはくれないだろうと思っていた手を、予想外に握られた

何とも言えない気持ちとは、これの事を言うのだろう





2010.1.23.

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あきゅろす。
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