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頬を緩めた理由



ユキが伊達家へ来て、ふた月が経った

ひと月経った頃から動き出していたユキは、大分ここに慣れてきたようだった

庭の掃除を手伝うユキを見ながら、政宗は頬を緩めた



「政宗様?何か良いことでもありましたか?」

「Ah.ユキは此処に馴染んだようだな」



政宗の視線の先を追って、小十郎がユキに顔を向ける

驚くほどに、ユキは仕事が出来る

片腕だから出来ない事も多くあるが、両腕揃っていれば将来的に小十郎の位置に配する事も出来ただろうと思うほどだった

小十郎はふと、気掛かりだった事を尋ねた



「‥‥‥政宗様、先方への返事は如何なされるおつもりですか?」

「佐々か‥‥」



綾姫を送り出しユキを引き取る旨を佐々家に伝えた時、すぐに返事が来た

ユキを即刻国に返して欲しいと

黒脛巾組に調べさせたところ、どうやらユキは本妻側の人間に追い出されただけであり、当主である桔成はユキを余所へやる気はないようだった

どうやら思ったよりも家の内情が複雑なようで、今も佐々家には探りを入れている



「ユキを、気に入りましたか」

「Ah?どういう意味だよ、そりゃ」



冗談めかした小十郎の問いに、政宗はクツクツと笑いを零す

気に入ったかだと?

どうだかな



「アイツは俺だ」



揺らぐユキの瞳に、気付かなかった訳ではない

それを無視してでも立ち上がらせたかった

予感がした

ユキが俺の隣に立つ



「ここで潰れさせやしねえよ」



決意にも似た政宗の呟きに、小十郎はただ目を細めた




2011.3.2.

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あきゅろす。
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