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やさしい緑の子







「ユキっ!!」

「wait!今は寝てる」



政宗がユキを連れ帰れば、姉である綾姫が駆け寄った

怪我人と共に荷台に乗せられていたユキは、すぐさま用意されていた部屋に運ばれて行った



「綾姫、話しがある。アンタの弟、ユキのことだ」

「、はい」



怪我人達が全て運ばれた後、政宗は綾姫を部屋に呼んだ

政宗の傍らには包みが一つ置いてある

同席している小十郎も中身は知らなかった


それを綾姫に渡してやりながら、政宗は言った



「アンタの弟の右腕は、俺が落とした」

「!」



綾は瞳を見開き包みの中身を理解した

震える手で包みを持ち、そして開く


ユキの右腕


多くの傷を残しながらも男ながら白く細いユキの腕が現れた

綾はそれに愛おしそうに頬を寄せる



「アンタもcrazyだな」

「‥‥‥」



ハラハラと涙を零す綾は政宗の言葉を気に止めはしない



「ユキは、右腕を死んだ奴らと一緒に埋めろと言ったぜ?」

「‥‥‥優しい子」



優しい子?



「彼らへの手向けでしょう。共に私を守ってくれたのですから」

「oh well.」



手向けとしては出来過ぎか

切り落とすしかなかったとはいえ右腕一本



「その心意気や良しか。なあ?小十郎」

「はっ、そうで御座いますな」



良いものか、綾は心の中でひとりごちた

右腕一本がどれだけユキにとって重要か、綾はよく分かっていた


細く白いユキの腕


当たり前だ

いくら鍛えていても、ユキは女なのだから


今は少年で通るが数年後にはどうなるか分からないし、片腕では今でも力で劣るユキが武将として生きるのも難しい

全てはユキの母親が悪いのだ



ユキの右腕を布で巻きなおし、綾は政宗に向き直った

綾は行かねばならない

嫁ぎ先には伊達から報せを飛ばして貰ったから、綾は明日にでも此処を発たなければ


ユキは動かせない



「政宗様、無礼と知りつつ御願いが御座います」

「綾姫、弁えられよ」

「まあ良いじゃねえか、聞こう」



小十郎を制した政宗に、綾は心から感謝した

そして深く頭を下げた綾は懇願した





「ユキを佐々家へはお返しにならないで下さいませ」




どうかどうか

ユキをこのまま此処に






2009.12.18.

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あきゅろす。
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