[携帯モード] [URL送信]
冬のはずなのに



何だか冬のはずなのに暖かくて、いつも以上に起き難い

もう春が近いのだろうか?

否、新年もまだだというのに早すぎる



「‥‥‥、?」



あれ?

なにか、布団じゃない?

ぺたぺたと目の前にあるものの形を確かめるように撫で回す



「っ!!!」



急激に意識が開けて、ユキは声を押し留めるのに政宗との手合わせの十倍は精神力を消費した

いったい私は何を、何を、何を、しているんだ



何故か政宗様が隣で眠っているっ



未だに寝息を立てている政宗に気付かれぬよう、ユキはそっと布団から抜け出した

それから政宗に布団をかけ直し、そろりと部屋を出る

出たところで小十郎と葵に鉢合わせ、ユキは声にならない声を上げた



「こっちだ」

「は、はい」


小声で合図を送られ、大人しくその後についていく


何故あんなことになったのか、ユキには綺麗さっぱり記憶がなかった


だが想像はつく

酒だ

酒のせいで寝てしまったのだ、政宗様の部屋で

昨夜の失態の記憶が無いことで、ユキはまったく状況が分からない

二人が歩みを止めたのはユキの部屋で、ユキは部屋に入るなり土下座した



「申し訳ありません!酒に酔い、ましてや酔い潰れ、主君に対しあのような失態っ‥‥、どんな罰もお受けします!」



土下座に呆気に取られた小十郎だったが、一向に頭を上げようとしないユキを見かねて肩に手をかけた



「ユキ、頭を上げろ。あれは政宗様の命令だ」

「命、令?」

「そうです!ユキ様はむしろ筆頭殿に捕まってしまったのですよ」



捕まった?

何がどうしてそうなるのだろうか?

まったく理解できない



「昨日の夜、お前が酔いつぶれたのは分かるか?」

「はい、あの、政宗様との話しの途中で‥‥」



なんと仰有っていただろうか?

随分と嬉しいようなことを言ってもらえた気がするのだが

本当にどうも記憶が曖昧だ


「俺が酒を持って戻ると、政宗様がお前を行火がわりに寝ると仰有った」

「‥‥行火」



なにか納得だ

確かに二人で寝るのは暖かかった



「政宗様もお前が来る前から随分と酒を召されていてな‥‥。それであんな事を言い出したんだと思うが」

「いえ、しかし、酔いつぶれたのは私の落ち度で御座います。何なりと罰をお与え下さい」



そう言ってもう一度頭を下げたユキに、真面目な奴めと小十郎が嘆息した


ふと外に向いた視線の先には小雨模様の庭

そう言えば、珍しく痛みを感じなかった

いや、痛みに気付かなかったと言った方が正しいだろうか


つ、と無い右腕をなぞる



「痛むのか?」

「いえ、それが、余り痛まなくて‥‥」


「そうか。政宗様も熟睡されていたようだな」



そういえばユキが布団から抜け出しても起きないほどよく寝ていらした



「とにかく、政宗様が言うのならともかく、俺がお前を罰する理由はない。何もなかったならそれでいい」

「?‥何も?とは」



はた、と小十郎の動きが止まる

そこをつっこむのかと思わず葵を見やる

そうすれば苦笑いが返って来て小十郎は嘆息した



「片倉様?」

「気にするな。休め」



それだけ言って背を向けた小十郎を、ユキはただ見送った




2013.4.5.

[*前へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!