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揺らぐ、揺らぐ



ふらふらと、頭が宙に浮いて定まらない

片倉様はお酒をもらいに行ってしまったし、政宗様は先程から何か面白そうにしている

眠い、のかも知れない


駄目だ!

ここは政宗様の部屋だと言うのに!



「Hey.無理するな、寝てもいいぜ」

「も、申し訳ありません」



なんとか意識保とうと、ユキは背筋を伸ばした

そこに酒をつがれれば、素直に飲み干すほかなかった



「いい飲みっぷりだぜ。‥‥だが」

「?」



とん、と肩を押されて背中から倒れた

痛みを予感して目を瞑ったが予想していた衝撃は来ず、ユキはゆっくりと目を開けた



「‥‥‥‥」

「政宗様?」



背中に回る手がユキを畳に下ろした

目の前には政宗の顔があり、ユキはじっとそれを見つめた



「よく見りゃなかなか綺麗な顔してんな」

「そうでしょうか?」


顔の事をとやかく言われたことはない

皆が立場を弁えろと、煙たそうな顔をしただけだ

ああ、でも、母上はとても美しい方だったし、姉上も美しい

しかしそれよりも、



「政宗様の方が、ずっとずっとお綺麗です」

「Ah?男に言う台詞じゃねえな」



そう言って政宗が笑うので、ユキもつられて笑う

ごろりと、政宗はユキの脇に寝そべった



「お前は不思議だな」

「不思議、ですか?」



寝転んだまま、政宗に視線を向けたユキ



「不思議だ」



ユキの穏やかな笑みに、政宗は言葉を反芻した



「不思議な気分だ。まるで子供に戻った気がするな」

「私が子供だからですか?」


「Ha!そうじゃねえよ。まあ、つまり‥‥お前の笑顔はひだまりみてぇだって事だ」



困ったように笑う政宗をユキはじっと見つめていた


私は政宗様を見ていると、月を思い出します

どんな夜にも私に寄り添ってくれた月

月は太陽の光を反射して輝くのですよ、政宗様

だから、月こそがひだまりなのです



「‥‥ひだまり‥」



そう呟いたきり、横になって更に酒が回ったのかユキは眠りに落ちていた


ああ、此処で寝たら風邪をひく


そう思ってユキに伸びた政宗の腕

そこにユキの侍女である葵を引き連れた小十郎が戻って来た



「ま、政宗様!」

「Ah?」



ユキの背中に回した腕を引き寄せながら、政宗は顔を上げる

ユキを胸に抱く形になって誤解が生まれた



「政宗様、小姓に手を出すなとは言いませんがユキは病み上がりですぞ!」

「なにとぞ、なにとぞユキ様はお許し下さいませっ」



思いのほか大きな誤解が生じているが、政宗にとってはどうでもいい

いい感じに酒は回っているし、行火(アンカ)代わりにユキを一緒の布団に入れてもいい



「別にヤったりしねえよ、下がれ」

「しかし、」


「下がれ」



不機嫌そうに言ったからか、二人は渋々ながら部屋を出て行く

しかし思い直したように食い下がろうとする葵を、小十郎が手を引いていくのを見た


明日は小十郎の小言に付き合わされるかも知れねえな

そう思いながら政宗は布団の中でユキを抱き込んだ





(ああ、あったけぇ)
2012.7.17.

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あきゅろす。
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