金の稲穂
風に揺れる、金の稲穂
母親か、父親だったのか、それとも祖父か祖母か
私は手を引かれてそれを見ていた
そして兄が私をイタリアに連れてきた
十も上の兄
「私のルーツは日本だと思うんです」
もちろんボスから返事は返って来ない
ユキは独り言のように更に続けた
「あれは絶対、田んぼってやつだと思うんですよね。うーん、それがどうしてイタリアに来たのか‥‥‥」
ザンザスの部屋のソファで唸りながら、ユキはまた一枚書類を捲った
それからしばらくは書類整理に専念
かと思えばまた口を開いた
「あ、思い出した」
何を?
聞かなくとも言うのでザンザスは視線だけでユキを追う
「そう言えば私、売られたんでした」
そうだそうだ、思い出した
衝撃的な言葉とは裏腹に、ユキは探し物を見つけただけと同じ反応を示す
ひとつの疑問が浮かんだザンザスは、それをそのまま口にした
「‥‥処女じゃねーのか?」
「は?」
ザンザスの言葉の方が余程衝撃的だったのか、ユキは立ち上がった場所から壁際まで、一気に後ずさった
2009.8.3.
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