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I'm your blue bird!





帰った途端、カス鮫に呼び止められた

誰が止まるか

部屋でユキが待ってる筈だ



「待てって言ってんだろうがぁっ!ユキの事だぁ!」

「‥‥‥‥」



ユキの名前にピタリと止まる

つまらねえ事だったらかっ消す



「今日のパーティー、レイテが来てやがる」

「‥‥‥‥」



あまりのXANXUSの無表情さに、まさかとスクアーロの顔が引きつる

XANXUSはその名前に覚えはあった

覚えはあったが、誰だったかは忘れていた(寧ろパーティーの方を忘れていた)



「ノリエガの娘だぁ!ユキが寝てた間の最後の女だろうがぁ」

「‥‥‥ハッ」



そう言えばそんな名の女も居たか

そう考えて、だがそれが何故ユキの話しに繋がるのか分からない

XANXUSがそこまで気を回す筈がないと分かっているスクアーロは、先程の一部始終を話した

そうすればXANXUSが舌打ちする



「カス、ノリエガには俺が断りを入れる。女をどうにかしろ」

「お前がかぁ」



言ってさっさと消えたXANXUSにスクアーロは嘆息した

これであの女、レイテをXANXUSの愛人にという話しは消えた

ユキはまあ、XANXUSがなんとかするだろう



「まったく、世話のかかる奴らだぜぇ」





―ガチャ


自室に入れば隣の部屋にユキの気配を感じた

ユキもXANXUSの気配を感じているだろうが、XANXUSは先に電話をとった

スクアーロが寄越したメモの番号にかけ、すぐに灰にする



『はい、ノリエガ議員のオフィスです』

「ノリエガに繋げ」


『あの、どちら様でしょうか?』

「繋げ」


『‥‥‥‥‥お待ち下さい』



なかなか頭がいいらしい

電話口の男は誰からの電話か分からなかったにしても、XANXUSとノリエガの力関係は計れたようだ

少ししてノリエガが出た

どうやら誰だか分かっていたらしい



『これはXANXUS様。直接お電話いただけるとは光栄ですな。我が娘のことでしょうか?』

「ああ‥‥‥、二度と寄越すな」



ギクリと、電話の向こうでノリエガが震えた



『な、何か娘が粗相でも?』

「要件はそれだけだ」



ガチャン、XANXUSには珍しく普通に電話を終えた

視線を感じて顔を上げればユキが居た

泣き腫らした目が赤く充血している



「ボス、お帰りなさい」

「ああ」



ドアの所から動かないユキに近づいていって、つ、と頬を撫でた

渇ききらない涙の筋



「‥‥‥どうした」

「‥っ、」



分かっていて聞いた

ユキは弱り切ったように目を伏せて、ぽつりぽつりと話し始める



「ボスは、どうして何も言ってくれないんですか?」

「必要な事は言ってる」



ぐにゃり、ユキの顔が歪む

XANXUSは言うとおり、必要だと思うことは実際言っていた

何が不満だ

いつでも側に居て愛を囁けとでも言うのか



「言ってない!レイテさんの事だって、私はスクアーロさんから聞いた!私はボスから聞きたいのに」

「何が聞きたい?俺がどんな風にあの女を口説いたか、どんな風に抱いたか聞きてえのか?」


「!!、っっっ‥‥!違う違うっ」



ドン、とXANXUSを突き放す

それに苛ついたXANXUSがユキの腕を掴んで引っ張る

ソファに投げられたユキが咳き込んで、またボロボロと涙が出た



「テメーは俺の物だ。今さら駄々をこねたって離してやらねえぞ」

「ボス!ボス!私がボスの物なのは私だって知ってる。だけど違うの、私、ボスが」



ぐ、とXANXUSの手がユキの首に掛かった



「テメーの気持ちなんざ知らねえ。ユキ、まだ分からねえのか?泣いても叫んでも、もう逃がしてやれねえぞ」

「‥ボス、‥‥XANXUS」



ユキに馬乗りになったXANXUSの頬に、ユキの両手が触れる

ふわりと包み込むように触れられて、首を絞めていた手が緩んだ



「私はXANXUSの、幸福の、青い鳥?」

「‥‥‥ああ」



やっと帰って来た、逃げ出した青い瞳の青い鳥



「私、XANXUSが好きです」

「そうか」



ああ、じゃあ何だったんだこの騒ぎは

ため息を吐きそうなXANXUSを見て笑ったユキは、キスをした



「私は貴方のもの。そして私は貴方が欲しい」

「‥‥‥‥全部、テメーのもんだ」



なに言ってやがる

そう意味を込めて噛み付くようなキスをした



「私はXANXUSのことを他人から知らされるなんて嫌だった。死ぬ時も私の目の前で死んで欲しい」

「ハッ‥‥、上等だ」



またキスをして、ハグして


ああ、そうね

もしXANXUSが腹上死してくれたら、私はその冷たくなっていく身体を抱き締めていられる

言ったら鼻で笑われたけど、それが愛ってものでしょう?




ああ

貴方は私の


幸福の青い鳥





fin...2010.1.22.

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