神の住処
とても一週間じゃ立てるようにはならない
ある意味分かりきっていた事実だと、ユキは思った
だが式といっても身内だけの小さなものにするとXANXUSは言っていたから、ユキは車椅子でも大丈夫だとそう践んでいた
いたのに
「あ、あの、ボス」
「あ?」
「本当に式の間中これですか?」
「他に何がある」
純白の、レースやビーズもふんだんに使われたウェディングドレス(ルッスーリア作)を身に纏って、ユキはXANXUSの腕に抱かれていた
所謂、お姫様抱っこで
「車椅子でもいいんじゃ‥‥」
「黙ってろ」
ひ、ひどい
式の間中抱っこするなんて疲れるんじゃないかと心配してるのに!
でもボスなら大丈夫なのかも知れない
伊達に暗殺部隊のボスやってるわけじゃないんだから
「でもボス、私が恥ずかしいんですけど」
「‥‥‥」
「すいません嘘です嬉しいです」
無言の圧力がMAX!
ビビったユキはまくし立てるように言って、ソファに座るXANXUSの腕の中に収まる
ボスの腕の中は好き
あったかくて、気持ちいいから寝ちゃいそう
式の前だと言うのにユキの瞼は落ちる
「う゛ぉおおぃっ!!XANXUS、ユキ、時間だぜぇ!!」
「あ、はい、わっ」
―ドゴッ
呼びに来たスクアーロの頭に花瓶が激突した
流血しつつも倒れることは免れたスクアーロは、キレては駄目だと自分に言い聞かせた
今日はユキとXANXUSの晴れ舞台だ
XANXUSの事は差し引いたとしても、ユキのこの最良の日を台無しにしてはならない
「‥‥って、ふざけんなぁっ!!水浸しだろうがぁ!」
「ハッ、ドカスが」
「あーあー、駄目ですよボス、うわ」
ユキの言葉も無視して立ち上がったXANXUSはドアを抜けて教会へ向かう
ヴァリアーの屋敷で十分だと言ったXANXUSに求めた、ユキのたった一つの我が儘だった
「神なんざ居ねえぞ」
「知ってます」
本当に身内
ヴァリアーの幹部だけの教会内で、XANXUSは腕の中のユキに耳打ちした
ユキは笑って肯定する
「ボス、みんな此処で自分に誓うんですよ」
神様に会ったことはないし、暗殺を生業とする私たちは皆の言う神を信じる事はない
だから神は居ないと言いたい訳ではなく
ちょっと厳つい神父の前で誓い、指輪の交換、誓いの口づけを交わした
全部XANXUSの腕の中
ニヤニヤしてるスクアーロ達の前で、ユキはXANXUSに言い加えた
「ねえ、ボス。人の上に神が居るんじゃない。人の内に神が居るの」
"私の神はボスです"
それだけ耳元に囁いて、ユキはXANXUSの頬に口づけた
ああ、ボスにとっての神が私ならいいのに
2009.1.3.
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