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幸せになれない






ボスは、どうして私と結婚するんだろう?

十年も寝ていた私には何が何だかまったく分からない


ボスは何も言わない

また何も言わない


ボスを幸せにしたいのに、ボスは決して命令してはくれない




「ユキ」

「‥‥‥‥ボス?」



目を開けたら、目の前にボスの顔

寝ぼけてるせいかこんなに近いのに平気


そしたらボスがkissをしてくれて、私の心臓はドクドク早くなった

ボスは私を殺す気なんだ

心臓破裂で



「‥‥ふ、はっ」

「気分はどうだ?」



だから顔が近いんだって!

気分とか聞かれても答えようがないというか、絶対顔が赤い


思わず顔をそらせば不機嫌に側を離れていく



「あ、や、ボスっ」

「医者が来る時間だ」



そう言って、振り返りもせず行ってしまった

kissしてくれるのに、それ以上に側には居てくれない


駄目だ、駄目だ

ボスを幸せにしたいと言いながら自分の幸せも願っているなんて、なんて愚かなんだ

愚か者だ



死んでしまいたい

否、もう死に損ねたじゃないか


ああそうだ

アイリス様がどうなったか聞かなくては


アイリス様はボスを愛すると言ってくれたんだ



「う、」



ほんの少し戻った体力、車椅子に乗ってユキは部屋を出た

車庫に居た隊員に無理やり運転させて屋敷を出ると、昔馴染みの情報屋に連絡する

彼はユキを覚えていて、復活祝いだと無償で情報をくれた



「ユキさん、着きました」

「ありがとう」



着いた先はジョリネッロファミリーの邸宅

アイリス・ジョリネッロの家


急いで来たので恰好がまずかった

ヴァリアーの隊服を上に羽織っていたユキは、入り口で止められた

だが運がいいことにそこにアイリスが通りかかったのだ



「あなた、あの時の‥‥」

「お久しぶりです」






―カチャン

淹れてもらった紅茶を一口もらってカップを置く

アイリスはそんなユキを見ながら、ユキが口を開くのを待っていた



「家を、継がれたんですね」

「ええ、父と兄が抗争で死んだのよ」



残ったアイリスがファミリーを継ぎ、そして婿を取った

XANXUSとの婚約は、この事で破棄されていたのだ



「彼から聞いてないの?ていうか、生きてたのね」

「‥‥はい。つい先日、目が覚めました」



相変わらずだわ

また恋愛相談に来たのかしら?


アイリスはそう思って、相変わらずあの男は言葉が足りないと嘆息した

この調子だと、愛してるの一言だって言っていないに違いない

この娘はなんだか色恋沙汰、というかXANXUSについては鈍感だというのに



「それで?今日は何をしに来たの?私はもうXANXUSを愛せないわよ?」

「‥っ‥‥‥」



言われてユキは困った

そうだ

アイリスはもう結婚してしまった

もうXANXUSを愛してくれない

ならどうして此処に来てしまったんだろう



「クスクス‥‥、私はもう必要ないのよ。貴女が居るもの」

「私?」



ああ、本当にどうしようもないわ

この娘これじゃあ幸せになれないわ




2009.12.31.

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あきゅろす。
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