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怒っています





失われた脳細胞を、別の脳細胞が肩代わりして正常に活動する

世界で僅かに報告されている症例



「だそうです。まだ立つことすらままならないんですが」

「‥‥‥‥」



無言のXANXUSの前で車椅子に座りながら、ユキは今朝聞いたばかりの医者の説明を繰り返した

ドレスはルッスーリアが用意してくれたんですよーとか、髪が伸びたとか、ボスも伸びましたねとか

ユキは十年眠っていたとは思えないくらいよく喋った



「ユキ」



名前を呼んだらビクリとして押し黙った

怯えた声ではいと答える



「チッ‥‥、なに怯えてやがる」

「だってボス、怒ってます」



怒っている

言われて初めて気づいた


自分は怒っている

気づいて、怯えるユキにまた苛ついて、乱暴に抱き上げてソファに座る自分の膝に乗せた

軽すぎる



「軽い」

「十年、点滴だけでしたからね」



言って足に触れたユキ

細った足を隠す為か、白のロングブーツが覆っている

スカートを捲ってブーツを脱がせるが、ユキは抵抗らしい抵抗をしなかった



「ボス」

「寝るか?」



「幸せになれませんでしたか?」




XANXUSの瞳を見つめて言った


ボスを幸せにする為に、選んだ道だった

だけど私は帰った

それはきっとボスが幸せじゃなかったからだ



「ボス、アイリス様は」

「黙ってろ」



素直に黙る

ああどうして、ボスの左手に指輪があるのに

ボスの腕の鳥篭の中で飼い殺されたいと願ってしまう



「お前に渡すものがある」

「渡す、もの」



そう言ってXANXUSが上着から取り出したのは、箱にも入っていない指輪だった

XANXUSの指にはまっているのと同じ



「結婚しろ」

「は、ぁ?誰と」



ユキの手をとって指輪をはめたXANXUSは、自分の左手にそれを重ねさせる

並ぶ指輪にユキは大きく瞳を開いた



「俺と結婚しろ」



ボスと結婚?

あ、あれ?

何だかいろいろとすっ飛ばしてませんか?

ボスと恋人にだってなったことないんですけど



「あの、ボス」

「決まりだな」



週末には結婚式だとか

え?

あれ?


なんでウエディングドレスが?(サイズぴったり)





2009.12.18.

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