唇は額に落ちた
あまい、あまいお菓子はボスの得意とするところではない
でも私は大好き
「食べやすく小さくしたプロット・シュー、チョコでコーティングしたエクレア、パリブレストも作ってみました。あとはいま日本で人気のミニカップケーキにデコレートしたのもありますよ?ガトー・ショコラとフィナンシェも作ってみました」
「‥‥‥‥」
会議には余りにも不釣り合いなお菓子の山に、XANXUSは怒りを通り越して何も感じなかった
いや、漂う甘い香りに胸やけだけは感じていたのかも知れない
作成者である当のユキは、いつものように皆に紅茶や珈琲を淹れてやっと自分の席に座ったところだった
「すげーじゃんユキ、何かあった?」
「ボスにお礼半分、嫌がらせ半分ですよ」
嫌がらせという言葉に、そこに居た全員が動きを止めた
ただXANXUSとユキだけは気にした様子もなく、ユキに至ってはXANXUSにケーキを取り分けている
その異様な光景に耐えかねたスクアーロが会議を進め、お陰で本当にすぐに終わった
終わって部屋から出ようという時、ふとスクアーロが口にする
「だからよぉ、この間ユキがXANXUSのこと好きだと言ってやがったんだぁ」
「じゃあユキとボスは付き合ってるってこと?」
チラリ
XANXUSにコーヒーを淹れているユキを見る
プルプル、耐えかねたレヴィがXANXUSに向かって叫ぶ
「う゛ぉおおおっ、ブオォォスゥッ!!」
―ガンッ
「るせー」
炎が飛んで来なかっただけましというものか
レヴィの頭に熱いコーヒー入りのカップが直撃した
それに今度はユキが悲鳴を上げる
「ボス!せっかく淹れたのに!」
「‥‥怒んな」
立ち上がったXANXUSがふとユキの前髪を掻き上げる
「う゛ぉ」
「あ」
唇は額に落ちた
2009.10.18.
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